夏の昼ごはんに食べることが多く、いりこやごまがたっぷり入った味噌味の冷たい汁を、麦めしにかけていただきます。もともとは農村部で食べられていた即席の汁かけめしで、暑くて食欲が落ちたときでも食がすすむことから、今では県内の多くの地域で食べられています。 冷や汁は家庭ごとの味があり、焼いたあじなどをほ……
山里の恵みを生かした目にも鮮やかな山菜すしは「田舎ずし」とも呼ばれ、県全域の山間部でつくられます。鯖の姿ずし(『すし ちらしずし・巻きずし・押しずしなど』p114)とともに皿鉢《さわち》料理に必ず入るすしです。 具は甘酢漬けか醤油味の煮物で、ここにすし飯をくっつける「ひっつけずし」と、すし飯を詰……
地元でとれた小麦粉(地粉)を使ったうどんは、日常食としてもハレの日の食事としても供され、全県で広く食べられています。うどんを打つということは、炊事の中でとくに必須の技能とされて、昔は「うどんを打てないとお嫁に行けない」とまでいわれたそうです。 夏はとれたてのきゅうりや青じそ、ごまを使った冷や汁で……
山がちで平地が少ないため水田が少ない峡南地域では、米の代用として、地元の小麦を粉にした地粉のうどんを一年中日常的に食べていました。粉はひきたてがおいしく、最近は異常気象で夏が暑く秋になるとおいしくなくなってしまうので、自家用に小麦を栽培して製粉する家では粉を冷凍保存します。昭和40年代まで冷蔵庫……
大分市の戸次《へつぎ》地域でつくられている料理で、2~3mもの長さにのばした麺をつゆにつけながら食べます。戦国時代に大分を治めていた大友宗麟《おおともそうりん》に、好物のアワビの腸《ちょう》に見立ててこの料理を出したところ大層喜ばれたそうで、このことから「鮑腸《ほうちょう》」と呼ばれるようになっ……
大きな鯛の煮つけと煮汁を吸わせたそうめんとで、鯛の旨みが味わえます。大皿に盛りつけた見た目も華やかなハレの料理です。福良《ふくら》の港が近い南淡路では、祭りやお祝い、とくに結婚式には欠かせませんでした。鯛めんは両家親族の初「対面」をひっかけているともいわれます。 淡路島は、近海に豊富な漁場があり……
黒潮にのって北上するかつおは3~5月に県南部の海域に近づくため、田辺市の漁師は小型漁船で近海かつおを一本釣りし、3~4℃の冷水(真水と海水を合わせた水)につけ、鮮度が落ちないうちに日帰りで港に戻ります。漁獲して1時間ほどで食べると、まだ死後硬直していないかつおはもっちりとして噛みきれないぐらいの……
かつおのたたきは、高知の「おきゃく(宴会)」に欠かせないごちそうです。春のかつおはぷりぷりとした食感で香りがよく、脂がのった秋のかつおはとろっとした食感で重厚な味わい。それぞれの季節でたたきにして楽しんできました。市販のたたきはいぶした後に冷水にとり、火が通るのを止めていますが、家庭では冷水には……
県の魚でもあるとびうおは、島根県では初夏を告げる代表的な魚です。旬は夏。海の上を滑空しやすいように内臓も脂身も少なく身軽なので、さっぱりとした上品な味わいです。刺身にすると銀色に光って美しく、胸ビレを広げて姿づくりにすることもあります。 沿岸では2種類のとびうおが見られ、小さいホソトビウオを小目……
すき焼きほど肉が中心ではなく、ややあっさりした味つけで炊き合わせた野菜をたっぷりいただく、飽きのこない煮物です。肉と野菜のうま味を吸ったとろとろの麩もおいしくいただけます。 神戸市内でも、昭和30年代には外食では洋食文化が華やかでしたが、家庭の惣菜はまだ和食が中心でした。「ぐっだき」とはぐつぐつ……
山形県は豪雪地帯であるために寒いイメージが先行しますが、盆地の気候から夏は気温が高く、1933年に記録された山形市の最高気温は2007年に他県に抜かれるまで日本一でした。このような山形の暑い夏になくてはならないのが、だしです。夏野菜を刻んで醤油をかけ、味をなじませただけの火要らずの料理です。みょ……
夏野菜と大根の味噌漬けを刻んで混ぜた料理で、県北の飯山市や信濃町の夏の日常食です。忙しいときでも簡単につくれて、また暑くて食欲のないときでも温かいご飯や冷たいそうめんにのせるといくらでも食べられます。素材の味を生かし、また旬の食材だけでつくれるシンプルなところに先人たちの知恵が光ります。大根の味……
ここでいう「はす」は里芋の近縁種はすいものこと。葉柄の切り口にれんこんのようにたくさん穴が空いていることからこう呼ばれます。使うのは芋ではなく葉柄のみ。スポンジのような細かな穴があるので、食べるとシャキシャキとした食感です。 7月から9月のはすの収穫期になると県南部では味噌汁や刺身のつま、サラダ……
料理名の由来はやたらに何でも漬けこむことから、とも、やたらにおいしいから、ともいわれます。このやたら漬けがつくられてきたのは、三方を1000m級の山々に囲まれた県西部の千種《ちくさ》町(現宍粟《しそう》市)の中でも一番奥まった山間部の西河内《にしごうち》で、すぐ近くはスキー場です。雪深い冬を過ご……
県東部で隣接する匝瑳《そうさ》市八日市場地区と旭市干潟地区という限られた地域で、お盆の行事食としてつくられてきた料理です。材料はありふれたものですが、7種類の色とりどりの野菜を、すべてていねいにせん切りにすることで、手間をかけたごちそうとなります。 野菜それぞれの歯ごたえや色を残すように順番に煮……
大和郡山市や天理市など奈良盆地の周辺で、お盆にご先祖様にお供えしたり、家族が集まったりするときにつくる料理です。もとは真言宗のお盆の料理ですが、宗派は関係なくお供えする料理として家庭でつくられています。 夏に収穫できるもの、初物など7種を合わせてつくるぜいたくな料理です。材料は畑でとれたものが主……