紀伊水道でたくさんとれる鯛をそぼろや酢じめにし、錦糸卵や椎茸を散りばめた、色合いも美しい押しずしです。紀伊半島北西部、和歌山市周辺の正月や祭りの行事食で、鯛の白色、えびの赤色、錦糸卵の黄色、椎茸の茶色が大皿に映え、ハレの日にぴったりのすしです。こけらとは杉や桧を薄く割った板のことで、昔は屋根をふ……
大村ずしは、すし飯・具・すし飯・具と2段に重ねた角形の押しずしです。旧大村藩だった大村市を中心に、東彼杵《ひがしそのぎ》郡や西海《さいかい》市などに伝わるハレの日の料理で慶事や弔事いずれでも、また何か行事のたびに家庭でつくられてきました。大村氏の領地回復の祝膳が起源とされ、500年以上の歴史があ……
鯛はつがいになったら決して離れないといわれていることから、鯛めんは結婚式の縁起物として欠かせないものでした。立派な鯛が一尾まるまるのった大皿は見た目にも豪華で、婚礼のしめくくりに出ると祝いの場がさらに華やぎます。海から離れた宇佐市院内町《いんないまち》では、自宅で結婚式をする際、特別に海に近い場……
瀬戸内海沿岸地域では、地域でとれた新鮮な魚を煮て、その煮汁をそうめんにかけて食べるのが、昔からの夏の定番料理です。普段使うのは、めばるや黒鯛(ちぬ)、すずめ鯛などの小型の魚で、お盆や祭りなどのハレの日の料理には、写真のような大きな鯛でつくります。魚が壊れないようにハランや竹の皮を敷いて強火で短時……
大きな鯛の煮つけと煮汁を吸わせたそうめんとで、鯛の旨みが味わえます。大皿に盛りつけた見た目も華やかなハレの料理です。福良《ふくら》の港が近い南淡路では、祭りやお祝い、とくに結婚式には欠かせませんでした。鯛めんは両家親族の初「対面」をひっかけているともいわれます。 淡路島は、近海に豊富な漁場があり……
さつま揚げの名称で県内外に知られていますが、この呼び名は最近であり、地元では今も、つけあげ、ちきあげなどと呼ばれています。江戸時代に琉球から渡来した料理チキアーゲに由来するとも、島津斉彬《なりあきら》公が産業発展のために考案させたともいわれています。 地域によって原料や形に特徴があり、土地土地の……
煮味噌は常備菜として、県内のどの地域でもつくられていますが、南伊勢町、紀北町、尾鷲市など海に面する地域の場合は多くの漁獲に恵まれるため、魚介類の活用方法として、魚介を炊きこんだ煮味噌がつくられています。量的に少ない魚や名前が十分に広まっていない魚はあまり流通しませんが、これらの魚の、地元での利用……
鯛の唐蒸しは婚礼に際して供される金沢の郷土料理です。かつては嫁入り道具とともに花嫁が持参する雌雄2匹の鯛を、婿側が調理して招待客にふるまう習わしがありました。背開きにした鯛に卯の花(おから)をいっぱい詰めて、大皿に腹合わせに並べます。切腹を連想させる腹開きにはしません。「にらみ鯛」「鶴亀鯛」とも……