炊き上がったご飯に生の菊をたっぷり加え、全体によく混ぜてから蒸らします。やがて漂い始める菊の香りがごちそうで、新米を炊いて菊ご飯をつくると秋が来たと感じるのです。かつてはかまどで大勢の家族分のご飯が炊けたところに菊を加えたので、菊と炊きたてご飯の香りが家中に広がりました。薄めの醤油味のご飯にほろ……
木曽や伊那で親しまれてきた、収穫の祝いや来客のもてなし料理です。もとは山仕事をする人の携帯食だったという話もあります。他県にもありますが、長野県は小さいだんご形やわらじ形などで、これを幅広の竹串に刺します。 五平もちを食べるのは、米の収穫期である11月。一年の農作業の締めくくりに兄妹や親戚を呼ん……
お釈迦様の誕生日である4月8日の灌仏会《かんぶつえ》(花まつり)にお供えする行事食で、お釈迦様の頭、螺髪《らほつ》をかたどってつくったお菓子です。表面がゴツゴツした形ですが、食べると甘味と豆やくるみ、あられのコリコリとした歯ごたえが楽しめます。「こごり」とは、煮こごりと同様にちょっと固まった状態……
大きなだんごに椎茸、花麩、三つ葉を添えたお椀を、けいらんといいます。だんごを鶏卵、周りのそうめんを鳥の巣に見立てています。県北部の太平洋に面した野田村で食べられてきた不祝儀のときの料理で、卵を使った料理の代用として植物性の食材でつくられました。昔はだしも精進で、玉ねぎやかんぴょうでとりました。 ……
季節を問わず、人が集まるとき、正月や慶弔の行事などにつくられてきた、鹿角《かづの》地域のハレの料理です。精進料理の吸いものとしてもつくられ、だしに鶏卵に見立てた白いもち、けいらんを2つ浮かべます。お祝いのときは一方を食紅で色づけし、紅白のけいらんにします。見た目にも上品で趣のある料理です。 鹿角……
県中央部の盛岡市や滝沢市周辺では春になると、うこぎの新芽を摘んで、ほろほろをつくります。さっとゆでて細かく刻んだうこぎに、同じように細かく刻んだ大根の味噌漬けとくるみを合わせ、熱々のご飯にかけて食べます。ほろ苦いうこぎと鬼ぐるみのコクや甘味は相性がよく、味噌漬け大根のコリッとした歯ごたえとしょっ……
県南の米沢市と周辺の置賜《おきたま》地方では昔から、味噌と砂糖で味をつけ、くるみや大豆などを入れてついた味噌もちがつくられてきました。甘じょっぱい味にくるみのコクが加わったもちは焼いてそのまま食べるもので、昔も今も冬のおやつの定番です。 昔は臼でつきましたが、今は1升づき、2升づきなどのもちつき……
もちもちとしたやわらかい生地をかじると、甘じょっぱい味噌あんと、コクのある鬼ぐるみが出てきます。岩手県には、半月形で中に味噌や黒砂糖が入った小麦の食べものが各地にあり、1年を通して小昼《こびる》(農作業の合間に小腹を満たす間食)やおやつにつくられてきました。地域によって名前はいろいろで、あんも塩……