ぼんし粉という、うるちの砕け玄米をひいた粉を使ったもちで、もち米とよもぎ、塩を入れてつき上げます。弾力がありつつも、うるち米が入るので歯切れがよく、筑豊地域の山あいの盆地では冬場、焼いたり煮たりして食べてきました。田川郡赤村《あかむら》では、マッチ棒の大きさに切って、から炒りしたものを子どもたち……
6~8月にかけてつくられる初夏のおやつです。5月頃にとれるそら豆(外豆《とまめ》)を乾燥させてとっておき、そのあんを6月からのびてくるみょうがの葉で巻きます。そら豆とみょうがの葉の香りに夏を感じます。 「ぼち」はもちのことで、小麦粉を練って蒸したものもこう呼びます。こねすぎないので噛み切りやすい……
もっちりとして上品な甘さの生地の上に煮小豆がのったお菓子です。三角に切った白い生地は暑気を払う氷をかたどっており、小豆には悪魔祓《ばら》いの意味があります。一年の折り返し点となる6月30日、半年間の罪や穢《けが》れをはらい、これから始まる暑い夏を健康に過ごし、残り半年の無病息災を願う行事である夏……
耕地面積の9割が水田となっていた湖北地方では、以前はどの家でも田んぼのあぜに大豆を植えていました。晩秋に収穫した豆の大半はみそつき(味噌づくり)に使い、残りは一升瓶に保存して煮豆やきな粉など、さまざまに利用します。 炒った豆と米粉や小麦粉でつくる幸福豆もその一つ。寒かったり雨降りなどの日は、鉄の……
松の内の最後の日(1月7日)に、自然の芽吹きから活力を得て無病息災を願う行事食で、春の七草をかゆに添えたことから、七草がゆとも呼ばれます。中国の五節句のひとつである人日《じんじつ》に起源があるといわれています。 現在は春の七草パック(せり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほとけのざ、すずな、すずしろ……
徳島市周辺や県南部では、桃の節句(月遅れの4月3日)になると、女の子も男の子も三段重ねの手提げの小箱「遊山箱」にごちそうを詰めてもらい、遊山に出かけます。 中に詰める料理は、巻きずしにいなりずし、ゆで卵に卵焼き、色つきの寒天やようかん、ういろう、煮しめが定番です。行き先は桜の咲く土手や公園、磯や……
県内の多くの地域では4月3日は学校が休みで、近くの山に花見に行きました。子どもたちは赤と緑のようかんが入った弁当と、シナモンの香りがするカラフルなニッキ水を持って出かけます。聞き書きをした広島市南区の家庭では毎年、家族で近くの黄金山《おうごんざん》に登りました。黄金山近辺は江戸時代に、広島湾に浮……
南アルプス市を含む甲府盆地全体で、6月11日の田植え節句につくられてきた行事食です。うるち米ともち米に大豆を加えて炊いたご飯で、豊かな実りを田の神に祈願します。軽く大きめににぎり、竹の皮やふきの葉などの上にのせ、田の水口《みなくち》(取水口)に供えます。米に大豆を加えるのは、米が貴重なので増量す……
博多湾の北部にある志賀島《しかのしま》は四季を通して海の幸に恵まれており、4月の一番潮(大潮)から8月の一番潮には男性の海士《あま》が素潜りでさざえ漁を行ないます。新鮮なさざえの炊きこみご飯はコリコリとした食感と磯の風味、貝のうま味にあふれ、祝いごとや地域の行事のときにつくられてきました。 地元……
おからこは、上伊那のおもに中北部地域に伝わる十五夜のお供えで、浸水させたもち米とうるち米をすってまとめただけの簡単な即席もちです。一説に、十五夜の頃は収穫で忙しく、もちをついている暇がなかったことから生まれた風習といわれています。翌日、汁に入れて食べますが、ほかでは味わえない独特の歯触り、食感で……
県北部では祭り、とくに秋祭りやしろみて(田植えが終わった祝い)にはさばずしをつくる地域が多く、今でも伝承されています。中国山地に囲まれた地域で、魚といえば川魚が中心でしたが、昔から山陰の港から山を越えて魚を売りにくる行商もさかんでした。 さばずしは塩さばを塩抜きし、たっぷりの時間、生酢につけて魚……
鮎のくされずしは宇都宮市郊外にある羽黒山の梵天祭りにつくられます。市内の上河内《かみかわち》地区では鬼怒《きぬ》川が流れ、大量の鮎がとれました。その保存法である鮎の塩漬けを使ったくされずしが生まれ、秋に行なわれる梵天祭りの供えものや客人へのふるまいになったことで、受け継がれてきました。 塩漬けし……
庄内地方には、江戸時代中期から続く「大黒様のお歳夜」という行事が12月9日にあります。大黒様(大黒天)は、作物や財福を司《つかさど》る神様です。庄内民俗学会の春山進氏によると、昔は神仏も一年ずつ歳をとると考えられていたことから大黒天の年取りの祭り、つまり誕生日がお歳夜となります。また、大黒天が嫁……
山口との県境にある大竹市で、冠婚葬祭や日常の食事として昔から親しまれてきた混ぜご飯です。「もぶる」は「混ぜる」の方言で、白めしに旬の野菜や魚介を混ぜこみます。まめまめしく元気にと入れる黒豆の甘煮の甘味やなめらかな舌ざわりが混ぜご飯にマッチし、絶妙なおいしさです。 家建て(建前)や結婚式などお祝い……