県南西部に位置する土佐清水市の突端、足摺《あしずり》岬周辺の岩場には、ぐじま(ヒザラガイ)、トコブシ、あなご(イボアナゴ)、にな(バテイラ)などさまざまな貝が生息しており、地域の人たちは昔から日常的にとって食べてきました。 ぐじまはやわらかくなるまでゆでてから殻をはずし、身をきれいにして食べます……
県最西端の揖斐川《いびがわ》町の旧春日村は、伊吹山の東麓に位置する山々と清流に囲まれた地区です。特産の沢あざみはもとは谷筋に自生していた山菜ですが、古くに栽培されるようになりました。県の「飛騨・美濃伝統野菜」であり、2014年には世界的な伝統作物・食品の保存プロジェクト「味の箱舟」にも認定されま……
下北地域では、秋大根がとれ始めると大根を3、4本使って大鍋で煮あえっこをつくります。大根と山菜、豆腐、にんじんやごぼうを一緒に炒め煮にしたこの料理は、常備菜だけでなく、正月や冠婚葬祭などの人寄せにも使われました。1月15日の小正月は、女たちがごちそうを食べる「女の年取り」という風習があり、この日……
日光市の北部、福島県に接する旧栗山村に伝わる、うるち米をついたもちです。きめ細かくやわらかで、もっちり感はありますが、粘りすぎずに噛みきりやすいです。「ばんだい」は板台のことで、昔は板の上でついたのでこう呼ぶといわれます。 栗山村は山間地で、沢水が冷たすぎて田では水稲が育たず、陸稲《おかぼ》が少……
味噌仕立ての汁にもちとかつお節のみの大変シンプルな雑煮です。もちも直径7~8㎝と一般的なものよりひとまわり大きいのが福井、とくに県北部の嶺北《れいほく》の雑煮の特徴です。この雑煮を毎年食べているので、たくさんの具材がのった雑煮には違和感があるという人も多いです。「味噌ともちのみで、それぞれのおい……
のっぺいは県全域でつくられる代表的な郷土料理ですが、地域ごとに特色があります。新潟市近郊では里芋が中心で、祝いごと用と仏事用を区別します。正月用には10種類くらいの材料の中に生鮭、鶏肉、いくらが入り正月料理の主役級の存在です。祝いごとでは材料を拍子木切りか短冊切りにします。仏事用には精進仕立てで……
春を告げるたけのこや季節の野菜、豚三枚肉などを煮た、祝い膳や客膳には欠かせない煮しめ料理です。羹《あつもの》は吸いもののことですが、この料理に汁けはありません。もともとは島津の殿様料理で、県内の各町村に残る古文書などによると、筍羹、春寒、春筍、筍寒とも書かれています。由来からして鹿児島市内で武家……
津軽地域の茶碗蒸しは年越し・正月に欠かせない料理です。卵液には栗の甘露煮の汁を加えて甘くし、大きめの器に根曲がり竹や栗の甘露煮などたっぷりの具を入れるのが特徴です。家族が好きだと、具材があればふだんからつくることもあり、正月はもちろん、日常的にも家庭で親しまれている味です。 味つけと具の種類、具……
小豆島の土庄町《とのしょうちょう》では5月に肥土山農村歌舞伎、小豆島町の中山地区では10月に中山農村歌舞伎が行なわれ、また池田地区の亀山八幡の秋祭りでは太鼓が奉納されます。この歌舞伎や祭りの見物の際に食べられているのがわりご弁当です。 小豆島は昔から歌舞伎がさかんで、かつて島内に30もの舞台があ……
田植えではいろいろな地域で似たような煮物が食べられていますが、飯山地方の煮物に欠かせないのは凍《し》み大根。凍み大根は寒さの厳しい地域で生活する人々の知恵で生み出された保存食です。凍み大根が水分をよく吸うことから、田んぼにたっぷり水が入るように、田の水に不自由しないようにという願いがこめられてい……
浄土真宗の宗祖・親鸞聖人の恵みに感謝する法要、報恩講を白川郷では親しみをこめて「ほんこさま」と呼びます。11月上旬から12月に行なわれるほんこさまは、冬の一大行事。親戚や近所の人を家に招き、お坊さんの読経のあと、お斎《とき》として心づくしの料理でもてなします。 料理の準備は、その年の春から始まり……
庄内地方には、江戸時代中期から続く「大黒様のお歳夜」という行事が12月9日にあります。大黒様(大黒天)は、作物や財福を司《つかさど》る神様です。庄内民俗学会の春山進氏によると、昔は神仏も一年ずつ歳をとると考えられていたことから大黒天の年取りの祭り、つまり誕生日がお歳夜となります。また、大黒天が嫁……
土佐の宴会(おきゃく)料理は、山、海、野、川の幸を39㎝くらいの大皿に盛り合わせた皿鉢料理です。明治中頃まで全国各地に神様に感謝して食べる「盛り鉢料理」があり、土佐では皿鉢料理として発達しました。皿鉢料理の基本は、「生《なま》(刺身)」と「組み物」です。刺身は、まぐろや旬の魚を平づくりにします。……