防除のアイデア

病害虫対策

今月のアイデア:軟腐病

◎このコーナーでは、本電子図書館に収録されている記事の中から、季節にあわせた記事を紹介します。今月は軟腐病対策です。

被害写真1ニンジンでの発病 被害写真2チンゲンサイでの発病

<まず発生しやすい条件と生態を調べる>

 軟腐病は土壌中にいるバクテリア(エルビニア・カロトボラ)でおこる土壌伝染性病害です。この病原菌はダイコンやハクサイのほか多くの作物を害する多犯性の菌です。しかも発病畑では地下7cmの深さからも発見されており、難防除病害の一つになっています。

 発生しやすい条件は、『病害虫・雑草の診断と防除』ハクサイ軟腐病(第3巻・追録第6号)によると、

 ▽多くの野菜などに寄生し,どの畑にも本病病原細菌は生息している。

 ▽ハクサイなどの寄主作物が栽培されると,その根のまわりで本菌は増殖し,雨水などによって土粒ととも にはねあがって,ハクサイの中肋で増殖する。

 ▽結球期以後にハクサイの感受性が高まると,傷口,気孔,水孔などから侵入して組織の中で増殖して軟 化腐敗させる。

 ▽発病するとそこでさらに病原細菌は増殖し,悪臭を放つ。

 ▽栽培が終了すると被害株の組織とともに土中に残り,翌年の伝染源になる。

 ▽25℃前後で最もよく生育し,土壌pHは6~7が好適である。

 ▽土の表面から25cmくらいまでの深さによく生息しており,場合によっては地下70cmにも生息していることがある。

 ▽土壌水分が多く,空気湿度も高い条件で発生しやすく,降雨などによって飛散,伝播する。

 ▽秋作などでは長雨や台風によって発病が助長され,秋が温暖な年に多発する。

 ▽病原菌は土壌の乾燥に弱い。

 また、生態については『農業技術大系 土壌施肥編』土壌病原菌(根圏微生物)(第1巻)に詳しく書かれています。

<防除のポイント>

 『現代農業』によれば、

▼発生のしかた
 ダイコンの軟腐病は土壌中にいるバクテリアによっておこる土壌伝染性病害である。この病原菌(エルビニア・カロトボラ)はダイコン以外でも多くの作物を害する多犯性の菌であり、また広範囲に生息している。しかも発病畑では地下七cmの深さからも発見されており、難防除病害の一つになっている。
 軟腐病菌は〇~四〇度の間で生育するが、適温が三二~三三度と高温性であり、土壌の湿度も高いところでよく繁殖する。
▼被害の実態とその背景
 夏ダイコンの栽培は、中山間の高冷地で、耕地が限られているために、連作を余儀なくされ、そのために軟腐病菌の密度は高くなっている。また、このような条件下ではネグサレ病や葉腐れ病、キスジノミハムシの発生も多くなり、これらの被害部が軟腐病菌侵入の足場となるために、発病が多くなっている。
 最近は、青首ダイコンの栽培が主流になり、ウイルス病防除のためにシルバーポリマルチが普及している。しかしこの栽培法は地温を上げるために、白首ダイコンを無被覆で栽培していた頃よりも軟腐病の発生が多くなっている。
▼どう防ぐ
 高温多湿で多発するため、地温を下げる工夫をし、排水をよくする。また多肥栽培でも発生が多くなるので、適切な肥培管理が大切である。さらにネグサレ病などの病害や害虫の被害部が軟腐病菌の侵入門戸になっているので、これらの病害虫を防ぎ、土つくりなどを行なって、ダイコンが健全に育つようにすることが、とりもなおさず軟腐病の防除になる。
 多発生する畑では七~八月の栽培を避けたいが、どうしても栽培したいばあいには、クロルピクリンまたはディ・トラペックスによる土壌消毒が有効である。
(以上 1987年10月号 青井敏雄・愛媛県農業試験場)

 また、「農薬を最小限におさえる苗床時代の着眼と手の打ち方」として、次のような指摘がされています。

「とくにタマネギの軟腐病ははっきりしている。チッソだけに偏った施肥は、野菜が軟弱ぎみに育つだけでない。葉の働きが鈍り、糖分やデンプン、有機酸などの蓄積が少ないうえ、アンモニア態チッソが多くなる。また、チッソとの拮抗作用から、石炭、カリ、微量要素の吸収にも悪影響をおよぼし、病菌に対する抵抗力が弱くなる。軟らかく育った茎葉は、冷えこみ時に寒害をうけやすく、その傷口から病菌が侵入して発病する。軟腐病の予防は、まず適正な施肥量と栽植密度を守り、耐寒性を強めることが第一歩である。」
(1988年6月号 川崎重治)

<施肥・播種法など栽培法で防ぐ>

 『現代農業』には、過石の葉面散布で農薬代を45万円減らした農家・本川さんの実践が紹介されている。

 ナンプ病にきく農薬は、アグリマイシンしかないといわれているが、これは高い農薬である。一〇aに一〇〇〇倍で一〇〇l散布したとしても一回六一五円。ナンプ病は四回防除するから二四六〇円となる。実際には、生育後半になるほど散布液量をふやすから、三〇〇〇円を超す。
 あるタマネギ地帯で「ナンプ病に過石の葉面散布がいい」からとやっているところがあり、この地域でもジャガイモのナンプ病に過石が効かないものか、その経済性はどうかとやってみた試験によると…
「病害調査では、無防除区より、アグリマイシン+KBW区、過石区で効果が見られたが、収益性の面などでは無防除区より悪い。単年度での結論は不明である」
 これをみた本川さんは、「アグリマイシンしかないといわれているが、これをかけてもかけなくても発病の程度が同じなら過石でいいや」と考えた。そして六十一年は、アグリマイシンは一回やっただけで、あとは過石を四回、葉面散布したのである。 「過石はタダみたいなもんだよ。うちは四〇〇〇lのスプレアーを使っているが、それに八kg入れるだけだもの。反当四円! 四回で二八円! アグリマイシンで三〇〇〇円以上かけるのにくらべりゃまったくただだ」  六十一年にやってみて、ライマン価が下がることもなかったし、収量も落ちなかったそうである。本川さんは一五haつくっているから、これだけで四五万円以上の農薬費を浮かしたのである。

 ここで紹介されている過石の入れ方は次のとおり

 粉状の過石を使うが、はじめは失敗した。いきなりタンクに入れたので、ノズルがつまってしまったのである。そこで次からは、洗たく機を使うことにした。
 (1)まず、細かいふるいでふるっておちたものを使う。
 (2)洗たく機にお湯を入れ、過石を入れて一〇~一五分くらいかきまわす。
 (3)バケツでくんでタンクに入れる。
「タンクに入れるのがめんどうだったけどな」とおっしゃるが、わずかそれだけの手間で、反当たり三〇〇〇円ももうかるのならすごいものである。(1987年10月号)

 この他、『現代農業』には次のような参考になる記事があります。

  • 農薬代10分の1の花農家の施肥(3)カラーは連作すればするほどよくできる(1999年1月号) → 記事概要へ
  • ダイコン 密植して反収アップさせるためのタネ播き、施肥法 先進地・三浦半島の事例に学ぶ(1999年2月号) → 記事概要へ

<微生物で防ぐ>

  • 最近困ったやっかいな病害虫相談室 軟腐病(2002年6月号)→記事全文へ
  • 納豆ボカシ ハクサイの軟腐病などの多くの腐れにも効く(1989年10月号)→記事概要へ

<軟腐病もやはり酢防除>

  • 酢防除で軟腐病が止まる話(2003年6月号)→記事全文へ