防除のアイデア

今月のテーマ 薬剤に頼らない土壌消毒法

 連作障害対策には、これまで臭化メチルなどを中心とした薬剤による土壌消毒が行われてきましたが、2005年から、この臭化メチルが利用できなくなることもあって、様々な方法が開発されています。
 カーバムナトリウム塩液剤(キルパー液剤)やダゾメット粉粒剤(バスアミド微粒剤,ガスタード微粒剤)、クロルピクリン(クロピクテープも)などの効果的な利用法も入念に検討されています(農業技術大系土壌施肥編 第5-1巻「臭化メチル以外のくん蒸剤による土壌消毒」など)

■いま注目の熱水処理

  施設園芸で現在最も注目されているのが、熱水を利用した消毒法。その一つが、「熱水注入(自走式熱湯散水方式)」で、「熱湯処理後には少なくとも30cmまでの作土層のフザリウム菌およびセンチュウなどはいずれも検出限界以下まで減少する」という、すぐれもの。
(『病害虫・雑草の診断と防除』第10巻)→記事全文へ

■進化する太陽熱土壌消毒法

 これは、奈良県のイチゴ産地で萎黄病対策で開発された技術で、あまり経費がかからないのがメリット。夏場に一定期間、高温になる時期が必要なのが欠点だが、各地で様々な作物で手法が開発されている。以下は『農業技術大系 土壌施肥編 第5巻 土壌管理 土壌病害』に収録されている、太陽熱土壌消毒のタイトル。

  • 露地の施肥・作うね後太陽熱土壌消毒(エンドウ)
  • 寒冷地短期太陽熱土壌消毒(ホウレンソウ)
  • 収穫後のトンネル・マルチ利用太陽熱土壌消毒(メロン)
  • 太陽熱土壌消毒時マルチ同時施肥2作どり(レタス)
  • 苗床の太陽熱土壌消毒(タマネギ)
  • 3年に1度の太陽熱土壌消毒(露地ネギ)

     さらに施設栽培で、より省力的で安定した効果を発揮させるために開発されたのが、同じく『土壌施肥編第5巻』に収録されている「施設の施肥・作うね後太陽熱土壌消毒(改良型太陽熱利用土壌消毒)」(執筆者・宮崎県総合農業試験場の白木己歳先生)。手順は図のとおり。

    ■露地でも暑くなくても効く「土壌還元消毒法」

     ネギの難病害、根腐萎凋病が太陽熱消毒で40℃以上で14日が確保できれば防除できることは分かっていた。しかし、北海道のような寒冷地では、そのような温度を確保できない。そこで、北海道立道南農業試験場の新村昭憲先生は、ふすまや米ぬかをすき込んで、大量の灌水をして土壌を還元状態にすることで病原菌を死滅させる方法を開発した。それがこの「土壌還元消毒法」。
    (『現代農業』2001年6月)→記事全文へ
     ※『農業技術大系 土壌施肥編第5-1巻』の「土壌還元消毒法」などもご参考に。

    ■「土壌還元消毒法」をトマトでも

     千葉県では施設トマト産地で導入されている。トマトの土壌病害虫の褐色根腐病やネコブセンチュウに極めて有効だ、と。ただし、これらの病害虫は地中深いところまで生息しているので、ふすまや米ぬかなどの有機物は10a当たり2トンにし、深さ40cmまで耕せる深耕ロータリーで耕耘するのがポイント。
    (現代農業2003年6月号))→記事全文へ
    ※『病害虫・雑草の診断と防除』の<総合防除の考え方と実際>トマト・病気(土壌病害虫対策(執筆:千葉県農業総合研究センターの竹内妙子先生)もご参考に。手順は下記の通り。