口絵

濃家心得(美濃)<のうかこころえ>

新田の開発法,肥やしの種類・効きめ・つくり方・入手法,稲の品種,病害虫対策など,これだけは心得ていてほしいという,積雪寒冷地帯の百姓に向けた「農家の心得」集。美濃国郡上藩の新田奉行が書き残したと伝えられる。

農業時の栞(三河)<のうぎょうときのしおり>

東海道赤坂宿の旅館の亭主が著わしたユニークな農書。鳳来寺に参詣する道中の百姓十数人と老人との問答という形式で,木綿など26種類の作物の耕作技術を記す。先進技術を記述した『農業全書』の地域適応版。

百性耕作年中行事(丹後)<ひゃくしょうつくりかたねんじゅうぎょうじ>

丹後国田辺藩が領内全村の農作業と結びついた年中行事を調査した,いわば基礎データ。一見,日常の平凡な農作業の書き連ねだが,藩内農民が安定的な生産活動を行なううえで規範となるべき年間の行事内容が浮き彫りにされる。

作り方秘伝(紀伊)<つくりかたひでん>

紀伊国那賀郡深田村の庄屋による,農業技術に関する12点の記録。なし,紅花,すいか,ミツバチ,びわ,鶏,桃,けしなど,商品作物を取り入れるさいの諸経費や利益を見積もり,商業的農業の可能性を探ったユニークな農書。