著者は,猪・鹿の害に遭って苗数に不足が生じたことから,省力・多収の薄まき・疎植の稲作を編み出した。鬼怒川水系水田地帯の農法を具体的に述べており,同じ下野国,田村吉茂『農業自得』の強い影響をうかがわせる。
藤の葉,山ぶどうの新芽,大豆の茎葉を緑肥に使用するなど,榛名山東麓(上野国群馬郡上野田村)の土地柄をいかした農法を,稲・麦を重点に説く。
息子の急死に遭った信濃国更級郡岡田村の地主が,孫に家業を引き継ぐために農作物の耕作法や施肥技術,日常生活の万般にわたり記述する。生産力の高い地域の農業の実情,とくに水田の乾田化を促す用排水技術を知ることができる。
越中国砺波郡内島村の十村(大庄屋)が,先行の農書や土地の言い伝えを吟味しながら自らの農法を展開する。御上を意識しつつ決意を述べ,「このように農民を指導しよう,のう,御同役」と,リーダーの条件にも触れている。
加賀国石川郡福留村の十村(大庄屋)が,稲,あい・麻・たばこ・綿の特用作物,裏作の麦・菜種,早稲跡・麦刈り跡(菜園田)の各種野菜について述べる。水田の多面的利用,多肥集約農業の書で,野菜の振売りにも関心を示す。
若狭国遠敷郡下田村で書かれた,技術書と生活書の合本。稲,麦,麻,たばこ,里芋,綿,桑,油桐などの生産性を高める技術,火の用心,五人組,身体の健康,若者組などの質素倹約を旨とする生活について記す。