伝え継ぐ日本の家庭料理

『伝え継ぐ日本の家庭料理』の特徴

日本各地で掘り起こした、約1400品の料理がつくれます。

日本調理科学会に所属する研究者が現地の方から聞き書きをし、実際につくれるかどうか検証したうえで、レシピ化しています。料理の撮影はできるだけ現地で。つくれるレシピだから、次世代に伝えられるのです。

なぜこの料理がこの地域で食べられていたか、その背景も解説します。

材料、つくり方だけではなく、料理のいわれ、料理がつくられている地域の特徴、聞き書きしたお年寄りたちの話なども掲載。

各地域の気候風土もわかり、読み物としての面白さもあります。

料理別、素材別、行事別の構成なので、全国を俯瞰して料理の比較ができます。

例えば同じばらずしでも、エビや白身魚など魚介が豊富か、干し椎茸や豆など乾物が中心か、具や味つけの違いなどもテーマ別構成なので1冊の中で比較できます。


「伝え継ぐ日本の家庭料理」出版にあたって

一般社団法人日本調理科学会では、2000年度以来、「調理文化の地域性と調理科学」をテーマにした特別研究に取り組んできました。2012年度からは「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の全国的な調査研究をしています。この研究では地域に残されている特徴ある家庭料理を、聞き書き調査により地域の暮らしの背景とともに記録しています。

こうした研究の蓄積を活かし、「伝え継ぐ 日本の家庭料理」の刊行を企図しました。全国に著作委員会を設置し、都道府県ごとに40品の次世代に伝え継ぎたい家庭料理を選びました。その基準は次の2点です。

①およそ昭和35年から45年までに地域に定着していた家庭料理

②地域の人々が次の世代以降もつくってほしい、食べてほしいと願っている料理

そうして全国から約1900品の料理が集まりました。それを、「すし」「野菜のおかず」「行事食」といった16 のテーマに分類して刊行するのが本シリーズです。日本の食文化の多様性を一覧でき、かつ、実際につくることができるレシピにして記録していきます。ただし、紙幅の関係で掲載しきれない料理もあるため、別途データベースの形ですべての料理の情報をさまざまな角度から検索し、家庭や職場、研究等の場面で利用できるようにする予定です。

日本全国47都道府県、それぞれの地域に伝わる家庭料理の味を、つくり方とともに聞き書きした内容も記録することは、地域の味を共有し、次世代に伝え継いでいくことにつながる大切な作業と思っています。読者の皆さんが各地域ごとの歴史や生活習慣にも思いをはせ、それらと密接に関わっている食文化の形成に対する共通認識のようなものが生まれることも期待してやみません。

日本調理科学会は2017年に創立50周年を迎えました。本シリーズを創立50周年記念事業の一つとして刊行することが日本の食文化の伝承の一助になれば、調査に関わった著作委員はもちろんのこと、学会として望外の喜びとするところです。

2017年9月1日 一般社団法人日本調理科学会 会長 香西みどり


日本調理科学会 創立50周年記念出版委員会
委員長 香西みどり(お茶の水女子大学名誉教授)
委員 石井克枝(千葉大学名誉教授)、今井悦子(元聖徳大学教授)、
真部真里子(同志社女子大学教授)、大越ひろ(日本女子大学名誉教授)、
長野宏子(岐阜大学名誉教授)、東根裕子(甲南女子大学准教授)、
福留奈美(東京聖栄大学准教授)

撮影 五十嵐公、奥山淳志、高木あつ子、戸倉江里、長野陽一

アートディレクション&デザイン 山本みどり

表紙イラスト 武藤良子


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