Ⅰ.幼苗期・分けつ期の症状
1.融雪後、茎葉が変色枯死する
A.地上部茎葉に菌核がみられる
a.菌核は黒色、ネズミの糞状
b.菌核は黒~褐色、小型の球形~亜球形
c.菌核はまれで、黒色の薄いかさぶた状
B.地上部茎葉に菌核がみられない
a.茎葉は褐色に枯凋する
i)クラウンから容易に抜け、地下部に菌核がみられる
ii)クラウンから抜けず、中心葉のみ抜ける
b.枯死葉の一部が淡紅色、ときに淡紅色の胞子の塊がみられる
c.茎葉は乾燥後灰褐色となり、くだけにくい
2.茎葉が変色する
A.茎の地際部が変色
a.紡錘形で時に中心部が灰褐色の病斑が見られる
b.葉しょう全体が褐変する
B.茎の地際部は変色しない
a.葉にかすり状、縞状の退色斑点、葉先から黄緑色になり枯れ上がる
b.全体が黄化、葉の幅が広く、草丈は低い
c.下葉および葉先が黄化する
i)茎葉に白いかびがみられる
ii)根が黒変腐敗している
Ⅱ.節稈伸長期以降の症状
1.葉の症状
A.斑点性病斑
a.やや隆起した赤褐色の小斑点、赤褐色の粉(胞子)を生じる
b.灰白色の斑点、のちに白い粉(胞子)を生じ、古くなると黒小点を生じる
c.隆起しない黄白色の小斑点。時に癒合して、すそ枯れ症状になる
d.楕円~紡錘形、周囲がやや不明瞭な茶褐色の小斑点を生じる
B.斑紋状病斑
a.楕円~雲型状、オレンジ~褐色の大型斑紋
b.周縁が黄色、楕円~紡錘形の褐色斑紋、のちに黒小点を生じる
C.すじ状病斑
a.葉脈に沿った黄色で幅の広い条斑、中心部には褐色のすじが入り葉しょうへ連なる
2.地際部の葉しょうおよび稈の症状
A.紡錘形の褐色病斑、中心部は灰褐色、ときに癒合して稈の周囲全体におよぶ
B.葉しょうの節付近、ときに全体が褐変。稈が褐変することはまれ
C.地際部の葉しょう・稈・クラウンおよび根が黒変。株は容易に抜ける
Ⅲ.穂・種子の症状
1.出穂しない、または出すくみになる
2.出穂する
A.白穂になる
a.葉にすじ状病斑、株はわい化する
b.株は容易に抜け、根・クラウンは黒変腐敗している
c.穂首が褐変。部分的白穂の場合はその基部の穂軸が褐変している
B.穂の形態異常
a.小型化・奇形化する
b.子実内部に黒い粉(胞子)を生じ、小穂から噴出する
C.小穂の変色
a.小穂の褐変、オレンジまたは薄紅色のかび(胞子)を生じる
b.白色~灰褐色のかびが付着、のちに黒点を生じる
c.小穂の表面に微小黒点を生ずるが、かびの付着はみられない
D.種子の異常
a.種皮が褐色になり、胚の部分などが黒色になる
b.白く退色し、ときに薄紅色、種子は細り種皮にしわがよる
Ⅳ.全身の症状
1.萎縮する
A.葉が黄色かすり状となり、葉先が黄色に枯れ、株全体が萎縮する
B.そう生し、若葉などに黄白色小斑点がかすり状、またはすじ状に生じる
C.中心に褐色のすじが入った黄色条斑が葉から葉しょうへ連なる。下葉から現われる
D.茎葉は全体的に黄化し、葉の幅は広い
2.枯死する
A.融雪後、起生前に枯死する
B.地際部が変色し、生育不良、激しい場合は枯凋する
3.倒伏する
A.地際部の稈に紡錘形またはそれらの癒合した病斑がみられる