紀伊半島北西部にある有田川町の中でも東に位置し海から遠い清水では、塩さばと、煮た根菜や油揚げ、高野豆腐などをご飯に混ぜ、かきまぜをつくります。今でこそ食べたいときにつくりますが、昔は刺身などは正月だけで、普段は塩さばがごちそう。その塩さばを使うかきまぜは、田植え休みや雨休み、みかんの収穫が終わっ……
えびそぼろや焼き穴子がたっぷりのばらずしは、安芸《あき》(県西部)の瀬戸内沿岸のもの。人が集まるとき、お客をもてなすときは、地元の海の幸と旬の野菜をふんだんに入れてつくります。3月の節句には必ず母親が娘のためにつくり、雛飾りの前で近所の女の子と集まって食べたり、重箱に詰めて家族で野に出て食べまし……
緑の濃淡の模様が美しく、色も鮮やかなこの巻きずしは、「のり」ではなく「わかめ」で巻いたもの。新わかめのとれる春のすしで、旧暦のひな祭り(4月3日)の行事食として地域に伝えられてきました。県中部を流れる日高川が紀伊水道にそそぐ地域の日高御坊《ごぼう》では、この日を「しがさんにち」と呼び、わかめすし……
八戸《はちのへ》地方は春から夏にかけて、太平洋に吹く冷たく湿った風「ヤマセ」のもたらす冷害、凶作に悩まされてきました。そこで冷害に強い小麦やそば、あわ、ひえなどの雑穀が栽培され、それらを挽《ひ》いて食べる文化が発達してきました。せんべい汁は、そんな南部地域の粉食文化から生まれた料理です。 せんべ……
ふやかした大豆をすりつぶし、味噌汁に入れた素朴な味わいの汁です。かつて、年貢の取り立てで米が十分に食べられなかった時代に、空腹を満たす料理としてつくられるようになったともいわれています。県内各地で食べられており、秋から春にかけての日常の食卓に欠かせない料理です。以前は仏事や法事などの行事食として……