日常の食事の中で、具だくさんのおつゆといえばめった汁です。冬になるとよくつくられました。語源としては「滅多に食べないから」とか、「滅多に(やたらに)材料を切るから」など諸説あります。何でもいろいろな材料をめちゃくちゃに取りあわせた汁ものという意味もあるかもしれません。県内全域でつくられていますが……
ひきずりは、鶏肉をよく使う名古屋ならではのすき焼きです。かつては大みそかにひきずりを食べて、不必要なものを引きずらないで新年を迎えるという習慣があったそうです。江戸時代には地元の越津《こしづ》ねぎというやわらかい葉ねぎを使いましたが、今は生産量が少なく、一般のねぎが使われます。肉は名古屋コーチン……
今の大和高田市ですき焼きといえば牛肉。かしわ(鶏肉)のすき焼きを食べることは少なくなりましたが、食卓に肉があがることが少なかった昔は牛肉はもちろん、鶏肉を食べるのも特別でした。祝いごとや祭りの日、農繁期やかきもちなどの加工食品づくりで手伝ってもらった近隣の人たちにふるまう料理でもありました。 す……
対馬に古くから伝わる鍋料理です。メインに鶏肉か魚を使いますが、鶏肉を油で炒ってから煮ていたため「いりやき」と呼ばれるようになったという説があります。冠婚葬祭、各種の行事、来客の際にふるまわれ、とくに秋から冬の鍋料理です。昔は鶏をつぶして一日かけてじっくり煮こんだそうです。 いりやきには、味や歯ざ……
霧島地域では「刺身」といえば魚ではなく、このとり刺し、つまり鶏の刺身をさすほどで、地域の集まりの際にも必ず出されるものです。霧島連山のふもとにある霧島地域は海から遠く生の魚が食べられなかったので、客人や祝いごとなどには飼っている鶏をさばき、胸やもも、ささみは刺身にし、骨つきの手羽元などは煮物に、……
長崎の食文化の特徴である多国籍の献立を「和《わ》・華《か》・蘭《らん》料理」といい、和(日本)華(中華)蘭(西洋)を取り混ぜた客膳料理が卓袱《しっぽく》料理です。献立の中で豪華なものが中鉢として盛りこまれ、その代表的な料理が豚の角煮です。もともと中国料理で、宋代の有名な詩人、蘇《そ》東坡《とうば……
戦国時代から続くキリシタンの里、長崎市浦上地区に伝わる南蛮渡来の料理で、ポルトガル人の宣教師が信徒たちに「肉を食べる」習慣を伝えるため、長崎人の口に合うよう豚肉を炒めて野菜と一緒に煮たといわれています。そぼろの由来には、おぼろより粗い“粗《そ》おぼろ”が詰まった、また外国語がなまった言葉との2説……
客膳料理には欠かせない一品で、もっとも代表的な沖縄の豚肉料理です。沖縄では皮つきの豚肉がよく利用され、とろけるような絶妙な舌触りの皮と、箸で切れるほどやわらかくなった肉が美しく層をなしています。甘辛い味で、豚肉にかつおだしが加わって生まれる独特の深い風味が特徴です。 煮こみに使うのは沖縄の蒸留酒……
スーは「塩」、チカー(チキー)は「漬け」の意味で直訳すれば「塩漬け」ですが、沖縄ではおもに塩漬けの豚肉のことをさします。豚肉のうま味とほどよい塩味のついた素朴な料理です。かつては冷蔵庫なしで長期保存するために、豚肉の重量の40~50%程度も塩を使うものでした。県中部にあたる沖縄市の登川《のぼりか……
南部地方は平安時代からの馬の産地で、祭りや玩具など馬にまつわるものがたくさんあります。馬肉鍋をはじめとする馬肉料理もその一つで、なかでも五戸《ごのへ》には馬の仲買人(馬喰《ばくろう》)が多かったこともあり、大正時代から町内に馬肉料理屋がありました。 馬肉鍋を家庭で食べるようになったのは戦後になっ……