昆布とするめを細切りにして醤油たれに漬けこんだ松前漬けは、松前の各家庭で一年中つくられます。昆布は、松前地方特産の「ホソメ」と呼ばれるものです。町の施設には松前漬け用の裁断機があり、正月が近づくと家庭ごとにホソメと新物のするめを持って切りに行きます。正月以降に食べる分もふくめ1年分を切るので、1……
にしんと大根を麹で漬けこんだ、旨みの深い保存食で、江戸時代からつくれらてきたと伝えられています。にしんは、昔は大量に水揚げされた貴重なたんぱく源であり、麹と漬けることで野菜に旨みやコクを与えました。かつては夏もきゅうり、なす、うりなどと一緒に漬けたにしんずしをつくりましたが、最近では気温が高く発……
かつて八郎潟《はちろうがた》は琵琶湖に続く、日本で2番目の面積を誇る汽水湖で、漁獲量も豊富でした。よくとれる小魚は新鮮なうちにも食べましたが、塩辛や佃煮にして保存もしました。八郎潟町に嫁いだ方から当時の食事をうかがうと、白飯、味噌汁、雑魚《ざっこ》の煮つけ、おひたしが食卓を飾り、甘辛に仕上げた潟……
壱岐は、長崎県北部に位置し、福岡県と対馬市の中間地点に浮かぶ離島です。ゆべしは庭先に植わっているゆずで昔からつくられています。ゆずの皮を佃煮風に煮た保存食あるいは調味料で、昔から各家庭の食卓に欠かせません。 つくるのはゆずが色づく11月頃。長く保存できるので、たくさんつくって年中食べます。よく練……
九州では唐辛子のことをこしょうと呼びます。ゆずこしょうは夏から初秋にかけてとれる青ゆずと青唐辛子、塩でつくるシンプルな調味料です。以前は青ゆずの皮と青唐辛子をすりこぎでつぶしたりおろし金でおろしていましたが、今はフードプロセッサーを使います。家庭によってつぶし加減や塩の分量、仕込む量は違いますが……
ばっけとは、東北や北海道の言葉でふきのとうを指します。県北部に位置する登米《とめ》市では3月に入り雪が溶けてきた頃にようやくばっけが芽を出し始めます。花が咲く手前でとらないと、苦味も強くまずくなってしまうため、暖かくなり一気に花が咲き始める前に田んぼの畔や野山に出て摘みとります。ほろ苦く、香り豊……
魚をご飯や麹と漬けこむいずしは、正月や来客時のごちそうとして、また、冬の間の保存食として北海道に根づいている伝統食です。鮭をはじめ、にしん、ほっけ、かれい、はたはた、きんきなど、いろいろないずしが各地でつくられてきました。 話を聞いた帯広市の家庭では、正月に食べられるよう11月中旬から準備を始め……
かぶらずしは、正月の伝統的な料理として各家庭でそれぞれ腕によりをかけてつくり、親戚や知人に配ったものです。脂ののった能登のぶりは漬けこむとロースハムのようなピンク色になり旨みが際立ちます。かぶはより甘く上品な味わいになります。 魚と米(めし)を発酵させるなれずしとは違い、麹も加えて北陸のマイナス……
真だらのエラと胃を干した「たらおさ」を長時間水につけて戻し、醤油や砂糖で甘辛く炊いた料理です。県北西部に位置する日田市では、旧盆や正月になると必ずこの料理がつくられていました。 江戸時代、幕府の天領だった日田には九州の天領を統括する役職「西国筋郡代《さいごくすじぐんだい》」もおかれ、経済の中心地……
郡上《ぐじょう》市の明宝《めいほう》地区で、行事やもてなしの際につくられる、砂糖が入った甘さのある料理を2種、紹介します。砂糖が貴重だった時代に、甘い汁は特別なごちそうでした。 菓子椀は、報恩講や法事をはじめ、節句のお祝いなどさまざまな行事でつくられます。具材を一つずつ味つけし、甘い汁をかけます……
三方を1000m級の山々に囲まれた県西部の千種《ちくさ》町(現宍粟《しそう》市)は、近くにスキー場があるほど冬は雪が深く寒さの厳しい地域です。そんな地域で、唐辛子味噌は体が温まると好まれてきました。ご飯のお供として、これだけで食が進みます。秋には、家々に唐辛子が吊るされ、風物詩になるほどでした。……