生の大豆をすり鉢でクリーミーになるまですった呉を味噌汁に入れると、ぶくぶくと泡立ちます。吹きこぼれる寸前のふわっとした状態が食べどきで、ふわふわの舌ざわりに濃厚な大豆のうま味とだしや味噌の風味が合わさり、滋養に満ちた味がします。結婚式、葬式、法事などのごちそうでした。 この呉汁は嶺北《れいほく》……
大豆をすりつぶした呉を、具だくさんの味噌汁の中にだんごのように落としていきます。つなぎは入っていないので、煮えながら徐々に崩れていきますが、食べごたえのある汁になります。県北は黒大豆の名産地で、黒大豆をすりつぶして味噌汁に入れる呉汁は、風味のよい懐かしい味です。 黒大豆は畑で育てますが、田んぼの……
大豆は「あぜ豆」といい、以前はどこの家でも田んぼの畔《あぜ》に植えている身近な食材でした。栄養も豊富なため、鳥取の食卓では大豆や豆腐などの大豆製品が頻繁に登場します。中でも水で戻した大豆をすった「呉」を入れた呉汁は、豆腐のように大がかりな道具を使わず少量の大豆でできるので、冬、各家庭でよくつくら……
県西部の山内町(現武雄《たけお》市)は山間部の農山村で、棚田や段々畑でとれる米や野菜をリヤカーに積んで、隣接する焼き物の町・有田で行商する人が多くいました。海の魚介類は自転車でやってくる行商や、6月と9月のくんちの際に立つ市で買うくらいで、よけうち(土をよせて川を干して収穫する)の川魚や貝類の利……