赤と紺のコントラストが鮮やかなすしは、金沢や、金沢より南の加賀地区(白山市、小松市、加賀市など)で祭りなどの行事でつくられてきたものです。加賀地区は農業が盛んで、農家の庭先にはたいがい柿の木があり、柿の葉を使ったすしが一般的でした。金沢市内では木枠に詰める押しずしタイプ(『すし ちらしずし・巻き……
橋本市や伊都《いと》地方など県北東部の紀の川流域は、全国一の生産量を誇る柿の産地。古くから秋祭りや農繁期には必ず柿の葉ずしをつくってきました。柿の葉で包むと葉のよい香りがすしに移り、手に持って食べやすいだけでなく、柿の葉の抗菌作用で保存性がよくなります。秋祭りには重箱に詰めて親戚に持って行ったり……
県東部の山間部に位置する智頭《ちず》町は、海から離れているため、昔から塩魚や焼き鯖などの保存がきく魚や、清流でとれた川魚、池の鯉などを利用してきました。 智頭町やその周辺の八頭《やず》郡内で、お盆や祭り、来客時のもてなし料理の一品としてつくられている柿の葉ずしも、塩魚を使ってつくるすし。酢じめし……
柿の葉ずしは、奈良県を代表する料理で、県南部、特に吉野川の本流地域である吉野地方や五條市、川筋に近い御所《ごせ》市や高市《たかいち》郡で、田植えがすんで一息つく7月初旬から中旬にかけて、夏祭りのごちそうとしてつくられてきたものです。型箱で貯蔵するため、数日間は味わうことができました。 交通が発達……
かき菜は県南西部の佐野市周辺でつくられてきた菜花の仲間です。ほうれん草のように根ごと収穫するのではなく、茎をおっかいて(かいて)収穫するため、こう呼びます。 かき菜は春になるとほきてくる(大きく成長する)ので、最初に芯の真ん中をかいてしまいます。すると、脇から新しい茎が伸びてくるので、それをまた……
福岡県は全国的にも有数の甘柿の産地で、とくに筑後川流域の筑後地域で生産がさかんです。家庭では渋柿もたくさん植えていて、干し柿や、渋を抜き、あおし柿(さわし柿)にしました。 つるしてつくるので、干し柿のことをつるし柿とも呼びます。あおし柿は、甕《かめ》の中にかための渋柿を入れ、お湯を注いで何日か密……
柿の自然な甘さを加えた柿なますは、県内各地で見られます。秋は生柿を用い、冬には干し柿でつくります。山口県では、甘柿は富有柿、渋柿は西條柿が多いです。西條柿は西暦1000年頃から現在の広島県あたりを中心に栽培が始まったとされ、古くから中国地方に広く分布している代表的な品種です。やや縦長で側面に4本……
紫色の食用菊を新潟市では「かきのもと」といいます。生の食用菊が出回る時期は8月中旬から12月中旬ですが、乾燥品や冷凍品を使って一年中食べられています。 かきあえなますは、新潟市の冠婚葬祭や正月、来客のもてなしには欠かせない、華やかな料理のひとつです。かきのもとと種々の野菜やしらたきや麩が入った和……
もち米の古米とうるち米の2等米「わる米《ごめ》」を山柿と一緒に蒸してつきこんだもちです。県南部の相生町《あいおいちょう》の一部地域のみでつくられており、県内でも特徴的な料理になっています。相生町は四国山地や海部《かいふ》山地など標高1000m級の山々に囲まれた地域。以前はどの家の裏にも山柿の木が……
正月の祝いなますに、めでたさの象徴の紅白の大根やにんじんとともに干し柿を使います。かつては砂糖が貴重だったので、おじいさんが砂糖を蔵の棚の中にしまっていて、出してもらうときはおじいさんにお願いしていたという家もあったほど。そんな時代に干し柿の甘味はありがたい存在でした。柿なますは滋味豊かな冬場の……
県全域で食べられている正月に欠かせない一品です。一般的な正月の紅白なますはにんじんと大根でつくりますが、にんじんの代わりに干し柿を使います。以前は砂糖が高価だったので、干し柿を入れることで砂糖をたくさん使わなくても甘い味のなますをつくったのです。歯切れの良い大根にとろりと甘い干し柿と甘酢がよく合……