真いか(するめいか)の水揚げが多い道南地方では、6月に入り旬を迎えると、いかめしをつくります。甘辛のいかの味がよくしみたもちもちのご飯は、もともとは漁師が忙しい漁船の中でもつまんで食べられるようにと考案されたものです。戦時中に函館本線の森駅の駅弁として売られ、やがて全国的に有名になりました。 す……
行事や祭り、結婚式、棟上げなどのおめでたい席の料理としてつくられる、岡山を代表するすしです。その誕生は江戸時代に遡り、宴席の食事を一汁一菜と制限した藩主の倹約令に対して、豪華な食事を楽しみたい町民がすし飯の下に具を隠して混ぜて食べたとか、すし飯の上にたくさんの具をのせても「一菜」だといってつくっ……
大阪では小麦粉料理を「粉もん」と呼び、家庭でも店でも大変親しまれています。お好み焼きはたこ焼きやいか焼きと並んで、粉もんの代表格です。粉をだし汁で溶いたところに野菜などの具材を混ぜて焼きます。大阪では肉といえば牛肉ですが、お好み焼きと焼きそば、粕汁、カツには豚肉です。牛肉よりも脂が出るので、これ……
真っ黒な見た目がとても印象的な汁ものです。いか、いか墨、かつおと豚のだしでうま味たっぷりでコクのある味わいです。いか墨汁は昔からサゲグスイ(下げる薬)とも呼ばれ、のぼせや血圧を下げ、体の中の悪いものを出し、滋養強壮によいとされてきました。疲れたときや元気をつけたいときにつくります。また、新鮮ない……
“富山湾の神秘”と呼ばれ、春の訪れを告げるほたるいかは、普段は水深500~600mの深海にいます。春になると産卵のため上がってきて、群れをなして海岸近くに押し寄せます。まだ暗い未明、浜辺に無数のほたるいかが青白く光る光景はまさに神秘的です。 鮮度のよいほたるいかをゆでると胴が丸くなりつやが出て、……
ピンクにゆであがったべいかは、ふっくらとやわらかく、くせのない上品な旨みがあります。米粒のような小さな卵を持っていればもっちりとさらにおいしくなります。 べいかはヤリイカ科の小型種で、胴は4~7㎝ほど。瀬戸内沿岸の穏やかな内湾に生息し、春から初夏にかけてが産卵期です。丸ごとさっとゆでて、木の芽味……
炒った大豆をするめとともに調味液に漬けたもので、大豆は香ばしく食べごたえのある、ちょうどいいかたさになっています。するめのだしを最初に感じ、噛んでいるうちに大豆の風味がじわじわと出てきます。県北部で教わった料理で、大豆は体によいので、毎日5~8粒ぐらいずつ食べなさいといわれて食べた懐かしい味だそ……
大阪では、正月や夏祭りともなれば、神社や寺の境内には「いか焼き」の屋台が並ぶのが定番でした。たこ焼きの屋台もありましたが、それよりも店の数は多かったように思われます。それだけ手軽な軽食だったのです。 大阪の三大夏祭りのひとつといわれる住吉大社の住吉祭では、境内に臨時に設営された会場で「木下サーカ……
昆布とするめを細切りにして醤油たれに漬けこんだ松前漬けは、松前の各家庭で一年中つくられます。昆布は、松前地方特産の「ホソメ」と呼ばれるものです。町の施設には松前漬け用の裁断機があり、正月が近づくと家庭ごとにホソメと新物のするめを持って切りに行きます。正月以降に食べる分もふくめ1年分を切るので、1……
県北地域や中通り、会津など県内各地で広く食べられている家庭料理で、松前漬け(『漬物・佃煮・なめ味噌』p77)のルーツともいわれています。基本はせん切りにしたにんじんと細切りのするめを醤油味の調味液に漬けるシンプルなものですが、しょうがや昆布、ひじき、白ごまなどを加えたり、砂糖を入れなかったりと各……
兵庫県の瀬戸内沿いの春の風物詩です。いかなごは「玉筋魚」と書きますが、地元では「春告魚」とも書きます。スズキ目イカナゴ科の魚で、かますに似ているのでかますごと呼ばれることもあり、関東ではこうなご(小女子)と呼ばれます。 毎年2月下旬頃から4月頃にかけていかなご漁が行なわれ、新子と呼ばれるその年に……