県最西部の上越地方では、冬の貴重なたんぱく質源としてさめをよく食べます。さめは鮮度が落ちにくく、とくに交通不便な山間部では貴重な食材でした。年越しやおせち料理には欠かすことができず、さめの煮物の汁で根菜類を煮るとだしがきいておいしく、故郷の懐かしい家庭料理です。鮮度のよいものは、ぬたや焼き物など……
味をつけたさめの身を干したもので、あぶって食べます。戦前は単に「たれ」と呼ばれていましたが、戦後、エイのたれが出回るようになり、区別するためにこう呼ばれるようになりました。「鮫垂」と書き、その由来は前処理でさめの身を細長くそいで干すとき、垂れ下がる形になるため、また干すときに水分が垂れるから、な……
「わに」とは、さめのことです。備北(県北東部)の山間部にある三次《みよし》市や庄原市では、かつては手に入る唯一の刺身がわにでした。わには鮮度が落ちると筋肉中にアンモニアが生成され、それが腐敗を遅らせます。山陰地方で水揚げされたわには中国山地を越えて運ばれ、山間部の貴重な無塩《ぶえん》(なまもの)……
フカはサメのことです。独特の魚臭(アンモニア臭)のため、煮物や焼き物には適さず、多くはかまぼこの原料となっていますが、この料理は湯引きにしてにおいを緩和し、フカのおいしさを巧みに引き出しています。フカの骨はすべて軟骨で、やわらかい肉に、真皮、尾びれ、背びれ、骨などのコリコリとした食感が加わります……