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・主幹形や一文字,ジョイントV字など省力の樹形・仕立て
・出荷期延長・周年供給を目指す貯蔵新技術
・「柿も3年」の画期的技術,ゆら早生・中晩カン,モモ枯死症ほか
今号では,主幹形(カンキツ)や一文字(ナシ),ジョイントV字(カキ)など早期成園化や省力の樹形・仕立てを数多く収録。カンキツではまず,‘ヒリュウ’を台木に用いた低樹高(小樹冠)栽培を取り上げました。‘ヒリュウ’台といえば,温州ミカンや中晩カン類も含め多くの品種で樹を小さく低く納めることができるわい性台木。しかし,従来の‘カラタチ’台樹のように管理してしまうと,極度の樹勢低下や樹冠拡大の著しい抑制でかえって減収してしまいかねず,‘ヒリュウ’台なりの栽培管理が必要です。今号ではそのポイントとなるところを,高糖系温州ミカンの場合を例に福岡県農林総試の大倉英憲・松本和紀氏に解説頂きました。
また,省力生産体系における樹形の共通化という点では,主幹形栽培も注目されます。技術開発はすでに20年以上前から取り組まれ,一部導入事例もありますが,言われるメリットは果たしてどうなのか,実際どのように導入してつくりこなしていくか,という点について,広島総技研農技セ・果樹研究部の川﨑陽一郎氏と和歌山果樹試・中地克之氏に整理して頂きました。
一方,ニホンナシでの注目は一文字整枝。ここでは千葉県で開発の「2本主枝一文字整枝互の目植え栽培」と,福島県の「新一文字型整枝」の2例を収録しました。どちらも主枝を2本,一文字に伸ばすのは同じですが,前者は,ふつう並木で植えるところを主幹を列ごと交互にずらして植栽し,両側からの側枝の勢力が棚上で補完しあう配置に,後者は,2本の主枝を棚の上でなく下15~20cmに伸ばし,主枝から取り出す側枝が容易に棚付けできるようにしている点などが特徴です。どちらも大苗を仕立て,主枝長を確保して定植することで効率よく早期成園化がはかれます。それぞれの仕立ての手順,栽培のポイントや作業の実際管理などを「互の目栽培」は加藤修氏(園芸研究家)と平井達也氏(千葉農総研セ)に,「新一文字」を南春菜氏(福島農総セ果樹研究所)にそれぞれご案内頂きました。またナシでは岡山発の「ムカデ整枝」を,雨よけパイプハウス内でその骨格も利用しながら低樹高仕立てする栽培法も紹介。やはり早期成園化と,ナシで難しい減農薬を可能にした開発技術です。小嶋俊英氏(滋賀農技振興セ)のご報告。
このムカデ整枝もそうですが,作業動線が直線で,面的な結実層をもつ省力の樹形,しかも密植で初期収量を上げやすいといえば一番に手が挙がるのは,ニホンナシで始まった樹体ジョイント仕立てです。リンゴやモモ,クリなどほかの果樹でも取り組まれていますが,福岡農林総試ではカキの樹体をジョイントしてさらにそれをV字に仕立てる栽培を開発し,成果を上げています(写真1)。同試の朝隈英昭氏に,その特徴,利点と技術の実際,導入の際の注意点などを詳説頂きました。
その他リンゴでは,わい性のJM7台樹と半わい性のJM2台樹とを交互に植栽して早期収益の確保とともに園地の経済寿命の延長,併せて軽労化など作業性の改善もねらった半密植栽培を収録しました。秋田果樹試・佐藤善政氏の解説です。
果実の貯蔵,鮮度保持にも焦点を当てました。3つの新しい取組みを紹介したのが温州ミカン。温暖化の影響で,従来の予措や土蔵での貯蔵では十分な品質を確保できない状況が生じていましたが,静岡県では,これまでの冷風貯蔵に加えて,GP剤の散布と青色LED光の照射とを併せた取組みで成果を上げています。GP剤とは,ジベレリンとジャスモン酸の一種プロヒドロジャスモンの混用剤で,浮皮軽減効果で農薬登録(2011年)。果皮の老化抑制に必須ともされるこのGP剤を散布処理した果実を,予措後に冷風貯蔵庫に収め,期間中青色LED光を照射すると,浮皮度と累積腐敗果率が従来手法の半分以下となり,果実の貯蔵期間を3~4週間ほど延ばせます(写真2,静岡県農環専門職大学短期大学・山家一哲氏)。
これに対し,長崎農技開セの技術はGP剤の散布と冷温定湿貯蔵庫を組み合わせたもの。このシステムは,3~10℃,湿度85~90%というミカンの貯蔵に適した温湿度環境を93%の出現率で実現でき(従来の土蔵の貯蔵庫は25%),外気の温湿度変化が大きい2~3月に安定した貯蔵環境が得られます。出荷期延長が叶うほか,果皮が薄くて貯蔵には不向きとされる早生温州でも活用できるとのこと。同センター法村彩香氏のご報告です。
青色LED光ならぬ近赤外光の照射で出荷後の果実腐敗を抑制し,外観,食味や,昨今注目の成分β-クリプトキサンチン含量など果実品質の向上にもなるのが,(株)四国総合研究所の開発技術です。温州ミカン以外にも‘不知火’や‘甘平’‘清見’など中晩カンでも効果を発揮し,すでに7か所の選果場で専用照射装置が導入済み,とのこと。同研究所・垣渕和正氏らにそのシステム,効果のほどを詳しく紹介頂きました。
このほか,リンゴで「1-MCP剤とCA貯蔵併用による無袋果の長期貯蔵」(葛西智氏・青森産技セりんご研),「みつ入り果実の品質保持」(守谷友紀氏・農研機構)も収録しました。
老木の改植,品種更新は果樹共通の課題ですが,なかなか取り組めないのも現実。そんななか,「桃栗3年,柿8年」ならぬ「柿も3年」を目指したカキ「幼苗接ぎ木+大苗育成」は画期的技術です。台木播種した当年に幼苗接ぎ木,ポットで大苗育成し,接ぎ木3年目の定植当年の収穫が可能で,未収益期間の大幅な短縮,早期成園化が叶います(写真3)。杉村輝彦氏(奈良農研開セ果樹・薬草研セ)に詳しく紹介頂きました。
カキではこの他,脱渋新技術を2つ(山﨑安津氏・農研機構,杉浦真由氏・岐阜農技セ)と,年間管理作業の3~4割を占める摘蕾・摘果を省力化する結果母枝先端芽剪除処理(熊本昌平氏・和歌山果樹試)も収録しました。
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その他,カンキツ‘ゆら早生’安定生産のポイント,‘ポンカン’‘タンカン’‘日向夏’‘清見’など中晩カンの栽培管理の最新情報,「早生温州の樹上完熟栽培」など,ナシは開花・結実,着果管理をラクにし,樹勢維持にも役立つ花数制限の方法,遠赤色光(LED)夜間照射による花芽形成促進の新知見,モモは「枯死症と台木品種」との係わり,リンゴの温暖化に対応したわい化栽培‘ふじ’の窒素管理など,今号も盛りだくさんの技術・新品種情報を納めました。お読み頂き,それぞれお役立て頂けたら幸いです。