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「食・加工」通信

◆2004年7月15日号
  1. 今月のトピックス
  2. 元気な農村起業から・こだわりの食品企業から
  3. 食品加工・ちょっとアイデア
  4. 「食育」情報


1.今月のトピックス

●小さな加工だからこその「米粉パン」なんだなあ(編集室より)

岡山県哲西町で昨年4月から始まった町産米の米粉パンづくり。道の駅で販売。

 米粉パンがブームだという。「食品加工総覧編集室」としても,この秋に予定している最初の追録に,話題の米粉パンを新設項目として掲載すべく,あちこちに執筆のお願いをさし上げている。そんな中で感じたことを印象記風にお知らせしたい。

 東北で屈指の製パン業者に執筆をお願いしたが,開発担当者の反応は渋い。「米粉パンに取り組んでいるが,昨年秋から売れたのは100個だけ。わが社では粉に換算して1日25kgで10袋というのがミキサーを稼動させるのに必要な最低ロットなんだが,このままではミキサーを動かせない。いまのままでは米粉パンはちょっと無理だね」。農水省では各地の農政局単位に米粉食品普及のための組織をつくってきた。その会員でもあるこの業者は,玄米粉の開発にも取り組んできたのだが,どうしたことなのだろうか。

 一方,酒米『山田錦』の生産地である兵庫県小野市では,JA兵庫みらいが主体となって山田錦の米粉パンを加工販売し始めた。酒の需要が漸減するなかで,酒米「山田錦」の新たな需要を生み出そうとのねらいだった。03年12月末に酒米『山田錦』のパンとして販売を始めると,連日500個限定販売で長蛇の列。完売が続いている。

 米粉パン用の製粉機を開発した加工機械メーカーはいまの状況をどう見ているのか。京都市にある宝田工業(「最新型米粉パン対応粉砕機HT-1KJ」を発売)社長の天野正明さんは「ひさびさのことですわあ。こないに農家から求められてるいう手ごたえを感じて,機械いじりしたのんは。おかげで,まる3日深夜まで仕事させてもらいました」と意気軒昂だ。一緒に開発にあたった同社の奥田亮淳さんとは深夜1時,2時まで取り組んだ。天野さんにとって「こんな感じ」は,もう20数年ごぶさただったという。コシヒカリの作付が広がって刈り取り時期のイネの倒伏が相次いでいた当時,同社が開発した『石抜き機』は倒伏したコシヒカリの籾から小石などを取り除くのに不可欠の機械だった。夜討ち朝駆けで農家を飛び回った。とにかくよく売れたのだ。そのころの「感じ」がよみがえったというのである。

 米粉パンをめぐっては,昨年5月に大手のコンビニも販売に乗り出した。ところが,数か月で企画は中止。米粉パンが店頭に並ぶまでに4日かかっていたという物流上の問題が指摘されている。たしかに,焼きたてをその場でその日のうちに売るのはパンの魅力であり,米粉パンも例外ではない。ただ,どうやらそうした販売条件だけではないようだ。

 米粉パンは,インショップや小規模加工所のように手で分割し調整しながら成形できるなら取り組みやすい。それができないのが大手製パン会社。機械によるライン生産が前提となる場合,グルテンを添加しなければならない米粉パンは機械耐性の面で弱さをもつ。そのための技術は各社で工夫せざるを得ない。開発費がかかる上に,現状では原料粉もまだ高いとの判断もあるようだ。

 いろいろ話を聞くにつけ,米粉パンというのは自ら米を生産し,手づくりでパンに焼き身近なところで売る農家の加工にはうってつけのものだと思われた。



2.元気な農村起業から・こだわりの食品企業から

●素材を求めて東奔西走――埼玉県・高橋ソース(株) 高橋博志(高橋ソース社長)

 「いいものを作ろうと思えば素材。その栽培の現場に立つこと」

 私は,いつも原料を少しでもいいものにすることに力を尽くしたいと考えている。埼玉県の無農薬・無化学肥料栽培のタマネギ・ニンジン・セロリ・トマトにはじまり,北海道北見の有機栽培タマネギ,青森の減農薬栽培ニンニク,長野県の減農薬・無化学肥料栽培のリンゴ,福島・新潟の特別栽培の完熟加工用トマトなど,埼玉県本庄市で30年以上にわったてソース作りに携わってきたが,わが社のソースの素材原料は,いずれも栽培農家との契約栽培で確保してきた。

 いいものを造ろうと思ったら,素材原料にこだわることだと思う。わが社の主力商品となった『カントリーハーヴェスト』を開発していた1992年頃のこと,ソースに使う砂糖も無農薬無化学肥料栽培されたものにしたいと思ったが,手に入らない。試行錯誤を繰り返しながら,全国を探し歩いた。その結果,やっと鹿児島県の喜界島と沖縄の多良間島の黒糖と粗糖を手に入れることができた。たまたま両島にはハブがいないという事情で,サトウキビ栽培に殺鼠剤が使われていなかったのである。こうして殺鼠剤を使用していないサトウキビからつくられた粗糖と黒糖を手に入れることができた。リンゴはいまでもソース作りの重要な素材だが,開発当初,原料をめぐって,栽培現地に立って見る事の大切さを痛感する経験をした。当時,ソースを加工している途中で検査するとどうしても異性化糖やクエン酸が検出される。どうしてなんだと思っていたが,現地を訪ねてみてはっきりした。加工用だからということで,本当においしいリンゴが送られていたのではなかったからだと理解した。

 いまは,各地でこだわりの加工品や農産物を生み出している人たちとネットワークがどんどん広がる時代だ。商品開発も,販売も,原料調達もさまざまに広がりを持てるようになったのはほんとにうれしい。今では、全国のさまざまな生産者から「うちにも有機JASの野菜があるから取引したい」という声がたくさん寄せられるようになった。
時代は大きく変わってきたと思う。

高橋ソース株式会社 http://www.takahashisauce.com/
〒367-0041 埼玉県本庄市駅南1-1-19  TEL 0495-24-1641



3.食品加工・ちょっとアイデア

●今井誠一のちょっとアイデア?

■トウガラシ味噌に発酵過程を加えてみたら ……今井誠一(元新潟県食品研究所長)

 味噌の用途は,味噌汁が圧倒的に多い。しかし,少しではあるが加工品にも使われている。その加工品とは,和え物やタレに使う酢味噌・カラシ味噌などの「調理用味噌」と,ピーナツ味噌・ブタ味噌などの「おかず味噌」である。それらの中で,いまトウガラシ味噌がよく売れている。鍋物の薬味,餃子や田楽のタレなどに使われているらしい。

 家庭でトウガラシ味噌をつくるには,味噌に刻んだ生トウガラシを10%ぐらい加え,砂糖や味醂,出し汁などで味を調える。市販品のレシピは,味噌に粗挽きトウガラシ粉を10~20%加え,甘味料や旨味調味料,それにニンニク粉を少々を混ぜ合わす,といったところだろう。

 トウガラシ味噌に類するものに,中国のトウバンジャンと韓国のコチュジャンがある。トウガラシ味噌のいわば先輩格だ。トウバンジャンは有名な四川料理や湖南料理に不可欠な調味料である。コチュジャンは焼き肉,冷麺,ビビンバの味つけに使う。

 中華料理や韓国料理といえば,私の知人にも,そうした料理店の亭主たちがいる。彼らは異口同音に「いろんな料理に,味噌そのものはけっこう使うんだ。でもトウガラシ味噌は駄目だよ。日本でつくったトウバンジャン,コチュジャンも使う気がしないね」と言う。にべもない言い方をするので何故だと尋ねたところ,いずれも「辛味がストレートすぎる」との返答であった。

 そう言われてみると,思い当るふしがある。日本でつくられるトウガラシ味噌は,出来上がった味噌にトウガラシなどを混ぜて,すぐに出荷している。和製のトウバンジャンとコチュジャンも,豆類の麹でつくった醤(ジャン)に,あとからトウガラシを混ぜているのではないか。これに対し本場製品は,豆麹と一緒にトウガラシも仕込み,その後,発酵・熟成の過程をたどらせている。

 発酵させないのも一つの味覚の創造ではある。考えてみたいのはトウガラシを発酵過程にとりこむと,如何なる現象が起こるかである。トウガラシの辛味成分は,周知の通りカプサイシンとジヒドロカプサイシンで,いずれも配糖体になっている。一般に配糖体は,麹の酵素作用を受けると糖が離れ,分子構造が少し変わってアグリコンになる。ただここから先は残念ながら研究者もいないようなので推定の域を出ないが,そのアグリコンは,元のカプサイシンなどとは違った質の辛味を呈するのではなかろうか。

 トウガラシを利用したものに限らず,発酵食品の奥は深い。その奥を探るには,工程の一つひとつに,科学のメスを入れる必要があると思われる。

●ちょっと唸る 農家のひと工夫

(「現代農業」の「あっちの話 こっちの話」で掲載された農家の工夫です)

■ダイズあんこもおいしいよ ……北海道長沼町より 蜂屋基樹

 長沼町は、ダイズの作付け面積が日本一の町。地産地消の取り組みの一環として、同町の加工グループ「ビッグビーンズ」のメンバーは、ダイズあん作りに挑戦しました。町の試食会でもおいしいと人気だったこのダイズあんの作り方を、グループの代表・谷口嘉〈よし〉さんから教わりました。

 手順はこしあんを作るのと同じですが、まず、一晩うるかしたダイズを、ふきこぼれない程度の火加減で柔らかくなるまで煮ます。最低五時間以上煮ますが、その間に一~二回水を替えてやると、仕上がりの色がきれいで、ダイズ特有の味噌臭いにおいも取れるそうです。

 次に、柔らかく煮た豆を裏ごしします。谷口さんたちは網目の細かいザルでこしますが、網目にダイズが詰まらないように、上からチョロチョロ水を流しながらこすので、ボウルの上で作業するとよいでしょう。

 ボウルに溜まったダイズと水の混合物を、三〇秒ほどミキサーにかけると、滑らかなペースト状になります。これをこし布で搾ってから、再び火にかけ、約六〇%の重さの砂糖を加えて練り上げます。とろ火で練ってねっとり感が出てきたら出来上がり。

 白あんとも、もちろん小豆あんともひと味違ってダイズあんもなかなかのお味だそうですよ。

 (「現代農業」2003年11月号より)



4.「食育」情報

◆「食育」かくあるべし

「食育基本法」(法案)への見方や、どんな取組みが求めれられているかについて、農文協の考え方を「現代農業」7月号の「主張」としてまとめました。ぜひ、ごらんください。

 「現代農業」04年7月号主張 「食育」かくあるべし―<食><農><教育>をむらからつくる

◆「地域に根ざした食育コンクール」が盛大にひらかれました

「地域に根ざした食育コンクール2003」(提唱:農林水産省 主催:地域に根ざした食育推進協議会・(社)農山漁村文化協会 )の表彰式が、2004年1月18日(日)、「第1回 ニッポン食育フェア」(会場:東京国際フォーラム)の併催行事として行なわれました。

 <受賞事例>をみる

◆「食」と「農」の応援団

「食は命(いのち)」の認識を土台に食と農の望ましいあり方を究め、自ら実践していこうという人びとの運動を支援するサイトがあります。食と農をめぐる学習会や講演会、シンポジウムなどに、テーマに沿った適切な講師の方を紹介しています。

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