鳥取との県境あたりの県北部は中国山地に囲まれていて、海の魚は山陰から来た行商から買っていました。いわしやさば、しいらの塩ものや、にしん、するめなどの乾物が主でした。いわしは安かったのでトロ箱でまとめ買いし、簡単にできる加工品としてぬか漬けの「へしこ」にして保存しました。こうすると半年から1年ほど……
「へしこ」は魚のぬか漬けです。半年以上熟成させたへしこは魚の旨みが凝縮され、濃厚なかつお節のような香りです。軽く焼くと香ばしさも加わってさらにおいしく、香りだけでもご飯を食べられるほどです。 もっともポピュラーなのはさばのへしこですが、かつては、海に近いところでは、売りものにならない細々した魚が……
「がっこ」は秋田弁で漬物のこと。いぶりがっこはいぶされた独特の香りとパリッとした歯ざわりが特長の大根やにんじんの漬物です。野菜の燻製は世界でもあまり例がなく、秋田県独自の食文化です。 横手市山内《さんない》地区はいぶりがっこ発祥の地とされています。山間部で県内でも豪雪地帯で天日干しに適さないので……
東光寺大根は、八王子市との境にある日野市東光寺地区に伝わる、真っ白で大変美しい大根です。練馬区で江戸時代からつくられてきた練馬大根の流れを受け継いだ大根で、首のところは細く、長いもので1mほどになります。昔から大根を干し、漬物用に加工されてきました。 大根の収穫は11月下旬から12月上旬。葉を落……
晩秋になると伊勢平野のここかしこで、稲架掛《はさが》けされた大根が見られます。大根は太陽と寒風にさらされると甘味・うま味を増します。そして米ぬかを使うことで、乳酸発酵・アルコール発酵によるたくあん漬け独特の芳香、おいしさが生み出されます。 伊勢市、松阪市、明和町は伊勢平野の中心地で、広い田畑で農……
日野菜は滋賀県日野町が原産で、三重県でも伊賀から中勢・北勢地区まで広く栽培される漬物専用野菜です。かぶの仲間ですが、水分が少なく多少苦味があって大根やかぶとは違う風味があります。寒くなると小袋入りの日野菜漬けが市販され、樽入りは贈答に使われます。漬けるなら根が色鮮やかになる12月頃が最適です。 ……
日野菜は県南東部に位置する日野町発祥のかぶです。室町時代の日野の領主蒲生貞秀《がもうさだひで》公が、日野町鎌掛《かいがけ》に自生していた根菜を見つけたのが、栽培の始まりといわれています。漬物にしたところ、色、味ともに風雅であったため、京都の公家に献上し、公家がさらに天皇に献上し、ほめたたえる和歌……
万木かぶは、県北西部の安曇川《あどがわ》流域の高島市安曇川町西万木《にしゆるぎ》で栽培されてきた在来のかぶです。やわらかく、渋みや苦味、辛さが少なく甘味が強いのが特徴で、寒風に当てて干すことで余分な水けが飛び、歯ごたえがよくなります。また、重しをしっかりかけて低温でゆっくり発酵させることで味に深……
秩父地方は周囲に山岳丘陵をながめる盆地で、森林が多く水田は少ない畑作地帯です。しゃくし菜は秩父地方で昔から栽培されており、体菜《たいさい》の仲間で「雪白体菜《せっぱくたいさい》」といいます。その姿が「しゃもじ(しゃくし)」に似ていることからこう呼ばれるようになりました。 しゃくし菜の漬け方は白菜……
島根との県境にある庄原市高野町《たかのちょう》は、中国山地の山々に囲まれた冷涼な高原で、りんごが特産です。県内でも有数の豪雪地帯で、、冬の保存食として野菜や山菜を各家庭で漬けてきました。 近年は住居の気密性が高まり、漬物を漬ける場所や保存場所が少なく、漬物特有のにおいも敬遠されますが、昔の農家の……