金沢から加賀地域一帯にかけて、夏の惣菜の定番としてつくられてきたもので、スーパーの惣菜コーナーにも並んでいますが、他地域の人からは珍しがられることが多いです。だしをたっぷり含んだなすがボリュームを感じさせながら、魚や肉のようにもたれる重さはなく、なすの煮汁を吸ったそうめんとともに、暑さに弱った胃……
いわゆるなすの含め煮です。紹介するレシピでは、下ゆでしたあと調味料で煮ましたが、炒めてから煮る、揚げてから煮る、さらには最初から調味した煮汁で煮るなど、つくり方はさまざまです。薬味も唐辛子やおろししょうがであったり、あるいは薬味なしというように、自由です。炊きたてよりも少し冷めてからの方が、味が……
厚めに切ったれんこんの、もちっとした食感に油揚げ(厚揚げ)のコクと香りが重なり、何ともいえないおいしさと食べごたえのある一品です。 金沢産のれんこんは加賀野菜を代表する食材で加賀れんこんといわれ、でんぷん質が多く、太くて肉厚、粘りの強いのが特徴です。家庭では日常的に煮物や天ぷら、酢れんこんなどに……
コロコロの、直径2~3㎝ほどの小さなじゃがいもを皮つきで丸ごと煮たものです。水やだし汁はまったく入れず、醤油と砂糖、酒少々で甘辛く味濃く煮こんだ郷土料理で、じゃがいもが「かしぐ」(皮がしわしわになる)ように仕上げます。外はパリッと香ばしく、中はしっとりとしてほくほくとやわらかく、あとを引く一品で……
寒天を煮溶かして醤油と砂糖で調味し、溶き卵を流してかためます。大理石の模様のように卵が散っているのが美しく、祭りや正月には必ず用意される料理です。婚礼などの祝いごとでもつくられました。近年はスーパーやデパートの惣菜売り場では常時売られているので、県民にとってはなじみがある懐かしい味です。かつては……
かぶらずしは、正月の伝統的な料理として各家庭でそれぞれ腕によりをかけてつくり、親戚や知人に配ったものです。脂ののった能登のぶりは漬けこむとロースハムのようなピンク色になり旨みが際立ちます。かぶはより甘く上品な味わいになります。 魚と米(めし)を発酵させるなれずしとは違い、麹も加えて北陸のマイナス……
大根とにんじんの紅白なますは「源平なます」ともいい、通常は薄揚げが使われますが、正月には少し贅沢にぶりを加えた「ぶりなます」が用意されました。脂ののった冬のぶりと酢がほどよく調和しておいしく、酒の肴としても喜ばれます。この他、ぶりの残《ざん》(アラ)やかまを焼き、身をほぐして和える「ぶりかまなま……
鯛の唐蒸しは婚礼に際して供される金沢の郷土料理です。かつては嫁入り道具とともに花嫁が持参する雌雄2匹の鯛を、婿側が調理して招待客にふるまう習わしがありました。背開きにした鯛に卯の花(おから)をいっぱい詰めて、大皿に腹合わせに並べます。切腹を連想させる腹開きにはしません。「にらみ鯛」「鶴亀鯛」とも……
みたまは、お正月に食べる黒豆より甘さを控えた黒豆が入った白蒸しおこわのことです。甘いものが貴重だった昔、子どもの頃に食べたみたまは、ほんのり甘い黒豆が入ってとてもおいしかったものです。一般的にはみたまですが、「目玉」と呼ぶ人もいます。 金沢では、以前は新築の建前にはみたまを折り詰めにして祝い膳に……
たらの子つけは、塩でしめた雄だらの刺身に、ほぐした真子(卵巣)をまぶした料理です。雌だらは真子に栄養がとられるため、身は雄の方がおいしいのです。たらの刺身は淡泊な味わいですが、卵をまぶすことで旨みが加わり、とても上品な味です。それをやさしい味わいの煎り酒(日本酒と梅干しなどを煮つめた調味料)でい……
加賀太《かがふと》きゅうりは金沢生まれの金沢育ちで、15種が認定されている加賀野菜の一つです。太くて大きく、1本が600~800gにもなります。緑色が濃く、上から下まで太さが均一で、張りがあって、いぼがしっかりついているのがよいものです。加賀太きゅうりが店頭に並ぶと夏が来たと感じます。 普通のき……
加賀つるまめは、加賀野菜に認定されています。つるまめは地元での呼び名で、フジマメの一種です。他県でも各地にフジマメの仲間が伝わっており、それぞれ地元の呼び名で親しまれてきています。 さやを野菜として食べる豆で、緑白色のやさしい色合いのさや全体に、短い産毛のようなものが生えていて、これが独特の食感……
山深い白山麓《はくさんろく》地域では、田んぼがなかったため米は貴重でした。山地では焼畑を行ない、ひえ、あわ、かまし(しこくびえ)、そばなどの雑穀類、大豆、小豆などの豆類、いも類などを栽培していました。米を節約するために、麦飯やひえやあわを入れたご飯を食べたり、豆腐をつくった後に残るおからと野菜で……
いりこは「かまし粉」ともいい、かましは雑穀の一種、しこくびえのことです。しこくびえの粉を炒ったものが「いりこ」となり、そばがきのように湯でかいて(練って)食べます。山間部の栄養補助食品である雑穀を、より食べやすくする工夫です。 しこくびえの栽培は全国的に見ても珍しくなっていますが、山深く米があま……
あいまぜはおもに能登地域で食べられている伝統料理で、輪島市では正月料理や年中行事、祝いごとなどハレの日の食事に欠かせません。中能登から奥能登にかけて広く食べられています。 打ち豆とその土地でとれる旬の野菜を使い、歯ごたえを残して煮すぎないよう注意しながら味をなじませます。打ち豆のコツコツとした歯……
西日本の雑煮は、丸もちで味噌仕立てが多く、東日本では角もちですまし汁仕立てが多くなっています。石川県では昆布だしのすまし汁仕立てが多く、もちは加賀と能登は丸もち、金沢は角もちが多いというように、東西の特徴が合わさった雑煮が食べられています。 金沢に角もちが根づいたのは、加賀藩三代藩主・前田利常公……
能登地区は海藻の宝庫といわれ、つるも、あまも、ぎんばさ、もずく、てんぐさ、岩のりなど季節によりさまざまな海藻が出回り、食卓に上ります。中でもかじめのおつゆは、とくに冬の汁ものとして親しまれてきました。 かじめは加熱すると鮮やかな緑色になり、味噌汁や粕汁に入れると身体も温まりおいしいものです。多く……
かれいは日常によく食べられており、最近の家計調査年報でも金沢市のかれい消費金額は上位になっています。食べ方としてもっとも一般的なのは煮つけ。砂糖を入れず、醤油のみで煮る家庭もみられます。金沢市の海側の大野は醤油の産地で、ここの醤油は甘口であることや、新鮮なかれいは砂糖がなくても十分おいしいからと……
いしるは能登でつくられてきた魚醤です。これは、薄く切ったなすを、いしるを加えた湯でさっとゆでて食べるというシンプルな料理で、能登の夏の味です。畑のなすをとってきてすぐ食べるという、ごく日常的な副菜です。簡単で何ともいえずおいしく、なすの食べ方はこれに限る、いくつでも食べられるといいます。なすは少……