「かんぷら」は福島県の方言でじゃがいものこと。出荷に向かない小さなじゃがいもを皮のまま油で揚げ、味噌と砂糖をからめた料理で、農家を中心に食べられていたものが広がり、県内各地で親しまれています。油で揚げることで、皮がぱりっとして香ばしくなり、少し時間がたってもいものほくほく感が損なわれません。油が……
いもフライは県南西部の佐野市でとくに好まれており、市内には多くの専門店があります。家庭でもよくつくられます。この地域ではただ「いも」というと普通は里芋を指しますが、なぜかいもフライ、いもの天ぷらというときの「いも」はじゃがいもです。 ルーツは昭和初期、縫製工場の女工さん相手の移動販売です。ふかし……
コロコロの、直径2~3㎝ほどの小さなじゃがいもを皮つきで丸ごと煮たものです。水やだし汁はまったく入れず、醤油と砂糖、酒少々で甘辛く味濃く煮こんだ郷土料理で、じゃがいもが「かしぐ」(皮がしわしわになる)ように仕上げます。外はパリッと香ばしく、中はしっとりとしてほくほくとやわらかく、あとを引く一品で……
富山市南西部の山田地区は、標高100mから1000mの間に集落が点在し、棚田や森林が広がる中山間地域です。昼夜の温度差が大きい高原地帯でつくられるじゃがいもは、煮くずれしにくくおいしいと評判で、今では「牛岳《うしだけ》高原馬鈴薯」として県内有数の産地になっています。 山田地区では、じゃがいものこ……
県最東部・上野原市の日常食ですが、祭りのときにも供されます。河岸段丘の地形と水利に恵まれないことから、水田は少なく、陸稲、雑穀、麦類、いも類などをおもに生産してきました。いわれは、江戸時代に甲府代官の中井清太夫《なかいせいだゆう》が九州からじゃがいもを運んで栽培させ、飢饉《ききん》を乗り越えたこ……
ゆでた熱々のじゃがいもを、あぶらえ(えごま)味噌で和えます。油が出るまでよくするのがおいしくつくるポイントで、なめらかな味噌がほくほくのいもによくからみ、深いコクを加えます。明治初期の飛騨の暮らしを記した「斐太後《ひだご》風土記」には、じゃがいもを串に刺しあぶらえのたれをつけて囲炉裏《いろり》で……
寺の町・飯山市の代表的な精進料理で、江戸時代から冠婚葬祭などに出されていました。でんぷんをとり除いたじゃがいものシャキッとした歯ざわりが特徴で、市の無形民俗文化財に認定されています。じゃがいものせん切りに手間がかかるため、昔からハレの日につくられてきました。せん切りはスライサーなどの道具ではなく……
四国山地の中腹に位置する山間部、祖谷《いや》地方で食べられている味噌田楽です。祖谷では昭和30年代まで夏でも囲炉裏《いろり》を使っており、でこまわしも囲炉裏で焼きました。串の上からじゃがいもが頭、豆腐が胴体、こんにゃくがスカートのようで、回しながら焼く様子が人形浄瑠璃の木偶《でく》人形(でこ)を……
四国山地に囲まれた、久万《くま》高原町の冬から春先にかけての日常食です。稲作より畑作がさかんで、地域固有のじゃがいも、地いもがとれます。冷涼な気候のため、いもは芽が出にくく保存がききます。名前の由来は、いもを調味料とからめて煮つめている際、皮と中身がほぐれてしわができ、「ヒューヒュー」という音が……
いかとじゃがいもを炊いて、少しだけ醤油をさします。シンプルですが飽きのこないおいしさで、日常的によく食べられるおかずです。かつては、内陸部では「ぼてさん」が海のものを運んできましたが鮮魚はなく、へしこや干物、塩ものでした。そのため、この煮物も一夜干しのいかとじゃがいもの炊き合わせでした。今はいか……
県西部にあり、甲府市の南西に位置する南アルプス市は、一年を通じて寒暖の差が大きい盆地特有の内陸性気候です。この料理を紹介してくれた人が住む市内の旧櫛形町《くしがたまち》は、扇状地中央部であるため、水利に恵まれずに稲作には向かない土地でしたが、じゃがいもの栽培には適していました。そのため、じゃがい……
じゃがいもは6月に収穫すると翌年までとっておけるので、たくさん植えつけました。すると、親指大ほどの小いもがけっこうな量になります。こうした小いもは、いちいち皮をむいていては手間がかかり歩留まりも悪くなってしまいます。ちんころ煮は、そんな小いもを集めてとっておき、まとめて皮ごと煮た料理です。皮がく……