江戸前のすしが伝わる以前、臼杵《うすき》で「すし」といえば、茶台ずしを指しました。にぎりずしは各地にありますが、具(ネタ)を上下につけるのはこの地方独特です。下に敷いた具を茶台(茶たく)に見立てて茶台ずしと呼んでいます。 江戸時代、天保の改革の頃、臼杵藩は凶作と飢饉《ききん》で財政が苦しく、徹底……
かつお節と味噌を湯のみやお椀に入れ、お茶やお湯で溶かすだけです。いわばインスタント味噌汁で極めてシンプルですが、削りたてのかつお節は香りが立ち、濃いうま味が口の中に広がります。 薩摩半島の南に位置する枕崎は遠洋漁業の拠点港で、かつお節生産量は日本一です。港町の朝は早く、慌ただしく茶節をかきこみ仕……
県北東部の登米《とめ》地域では、鶏のそっぷ(スープ)を使った甘くて具だくさんの茶碗蒸しが昔から正月の一番のごちそうでした。卵は貴重な食材で、子どもたちは家の鶏が産んだ卵を食べずに売っておこづかいを貯める「卵貯金」をしていたという話があるくらいです。 茶碗蒸しの卵液は、卵に対してスープの割合が多い……
津軽地域の茶碗蒸しは年越し・正月に欠かせない料理です。卵液には栗の甘露煮の汁を加えて甘くし、大きめの器に根曲がり竹や栗の甘露煮などたっぷりの具を入れるのが特徴です。家族が好きだと、具材があればふだんからつくることもあり、正月はもちろん、日常的にも家庭で親しまれている味です。 味つけと具の種類、具……