津軽地方を中心に食べられている冬の郷土料理です。大根、にんじん、ごぼうなどの根菜と、春にとって保存しておいたふきやわらび、ぜんまいなどの山菜、大豆、凍《し》み豆腐などがたっぷり入った実だくさんの汁で冬の野菜不足を補い、体をあたためる料理としてつくられています。 津軽では小正月を「女正月《おんなし……
夏にとれる海藻のいぎすを、生大豆粉とだし汁で煮溶かし、寒天のように固めたものです。生大豆粉を使うのが、愛媛のいぎす豆腐の特徴です。いぎすは県北東部の今治《いまばり》市周辺の島しょ部の海岸の岩場に自生しています。褐色のいぎすは、日に干し、乾いたら水にさらすを3~4回繰り返すと白くなります。このさら……
奈良県の伝統的な米菓子で、冬に仕込んで年中食べる素朴な味のおやつです。県北東部の山添村は三重県との県境に位置する高原の村です。夏は冷涼、冬は厳寒で、冬の寒く乾燥した日が続く気候をうまく利用してつくられています。ただしつくるのは、奈良の東大寺二月堂の行事であるお水取りが終わる3月中旬まで。それ以降……
お釈迦様の誕生日である4月8日の灌仏会《かんぶつえ》(花まつり)にお供えする行事食で、お釈迦様の頭、螺髪《らほつ》をかたどってつくったお菓子です。表面がゴツゴツした形ですが、食べると甘味と豆やくるみ、あられのコリコリとした歯ごたえが楽しめます。「こごり」とは、煮こごりと同様にちょっと固まった状態……
しょんしょんは、麦麹と大豆麹、塩、あめ(大豆のゆで汁)、しょうがや昆布を合わせて発酵させたなめ味噌の一種です。最近は市販の麹を使うことが多くなりましたが、以前は10月頃に1年分の味噌を仕込む際に出るあめと自家製の麹を使ってつくっており、家々で味が違いました。甕《かめ》などに入れて保存しておき、少……
県南西部の足利市や佐野市では、節分にはひいらぎの枝や枯れた大豆の茎に焼いたいわし(めざし)を刺します。いわしの頭を戸口に、尾は勝手口に飾ります。いわしの臭いで悪いものが家に入らないようにするといいます。さらに唾をぺっぺとかけてから飾る地域もあり、こうすると虫が入ってこないのだそうです。 豆まきが……
鬼怒《きぬ》川沿いに位置する結城は、川周辺の土地が豊かで、米をはじめ、麦、大豆、そば、野菜全般がつくられてきました。すみつかれは、春に季節が移り、農作業の始まる初午に食べる料理で、しもつかれとも呼ばれます。正月の「塩引き」の残りの塩鮭の頭、節分の残りの炒り豆、酒粕、おろした大根とにんじんを煮たも……
新巻鮭の頭や尾と節分の福豆を炒った大豆、鬼おろしでおろした大根とにんじんなどを醤油や酒で煮てから冷まし、味をしみこませた料理です。県内では南会津郡の一部の地域だけで初午(2月最初の午の日)に食べられています。鬼おろしでおろした大根は繊維も水けもちょうどよく残り、鮭や大豆などの具材の味がよくしみこ……
江戸時代から続くという初午の行事食です。どこの家でもストーブの上に大きな鍋をのせて、グツグツ、コトコトと煮こみました。屋敷まわりに祀《まつ》られた稲荷に、しもつかれと赤飯を供えます。地域によってはきんぴらごぼうも供えました。料理は皿に盛る地域とわらづとに入れるところがあります。しもつかれを初午に……
県東部の畑作、稲作の農業を主とした地域では、2月の初午(旧暦の場合は3月)に稲荷神社や集会所に集まって飲食が行なわれ、その際に食べる料理です。また、屋敷稲荷(屋敷まわりに祀られた稲荷)に供えて各家で祭りをする地区もあります。とくに茨城、栃木の県境および日光街道沿いの町で多くつくられています。 材……
南アルプス市を含む甲府盆地全体で、6月11日の田植え節句につくられてきた行事食です。うるち米ともち米に大豆を加えて炊いたご飯で、豊かな実りを田の神に祈願します。軽く大きめににぎり、竹の皮やふきの葉などの上にのせ、田の水口《みなくち》(取水口)に供えます。米に大豆を加えるのは、米が貴重なので増量す……
県中部の松阪市嬉野《うれしの》地域は気候が温暖で、米をはじめ、さまざまな野菜がとれる農産物が豊かな地域です。ここは人々の結びつきも強く、昔ながらの行事も多く残っています。盆汁は、お盆に家族が集うときには必ずつくられる、夏野菜中心の具だくさん味噌汁です。夏の疲れた時期にとることでビタミン類やたんぱ……