春、山に入ると、大きな木の陰にある山椒の若芽(葉)が目に飛びこんできます。この香りのよい若芽をそのまま煮た、春の香りと味わいを感じられる箸休めです。醤油で味をつけることもありますが、塩と酒だけでつくると山椒の香りそのものが楽しめます。 日光市の今市《いまいち》地区は標高500~700mに位置し、……
丹波には黒豆や栗など多くの名産がありますが山椒も有名で、丹波の大名たちは丹波焼きの山椒壺に生の山椒や塩漬けを詰めて将軍家へ献上したそうです。このあたりでは、江戸時代から県北部の但馬《たじま》(養父《やぶ》市)の棘《とげ》がなく実が大粒の朝倉山椒を導入して、栽培が広がりました。江戸時代中期の百科事……
2月頃、北海道でとれたにしんが身欠きにしんに加工され、「新にしん」として会津地方に出回り始めるのが春。この頃から夏にかけて、山椒の葉と酢、醤油、酒などで専用の「にしん鉢」に漬けこんだのがにしんの山椒漬けです。にしんはかたくしまった食感で、噛むたびに旨みと酸味が広がります。山椒の葉のぴりっとした辛……
身欠きにしんと山椒の葉を交互に重ね合わせ、醤油、酢、酒、みりんなどでつくったたれに1~2週間漬けたものです。さわやかな山椒の風味と酢で生臭みは消され、噛みしめるほどににしんの旨みがじんわりと広がります。おかずや酒肴だけでなくお茶うけとしても食べられます。冷蔵庫で2カ月ほどは保存できますが、山椒の……
県内各地には湖魚《こぎょ》を煮つけて食べる習慣が根づいています。湖魚にはイサザ、モロコ、ゴリなどさまざまな魚がいますが、よく食べられているのが小鮎です。小鮎とは琵琶湖内で育った鮎のこと。普通、川で育った鮎は20㎝ほどになりますが、小鮎は成長しても10㎝ほどの大きさで、煮ると骨までやわらかく、丸ご……
なすの和え物はお盆の料理としてつくられることが多く、山椒和えも奈良市では盂蘭盆会《うらぼんえ》の2日目にお供えする料理の一つです。仏壇の位牌の数のご先祖様に一皿一皿盛りつけてお供えし、そのお下がりをいただきます。季節の野菜を山椒の実やごまで和えた、食欲をそそる香りが印象的な夏の料理です。調味料は……
京都でも新鮮な魚が手に入りにくかった地域の家庭では、小さないわしの丸干し、身欠きにしん、干し鱈、じゃこなどの干し魚を常備していました。この料理はじゃこと、どこの庭にもあった山椒の実を煮て、じゃこの臭みを除いた保存食です。春、たけのこの季節には山椒の葉を合わせ、その後に出てくる実で、じゃこを炊きま……