しめ鯖を1尾丸ごと使った姿ずしは、西部(石見地方)では冠婚葬祭などに欠かせない家庭料理です。焼き鯖をほぐして入れる東部(出雲地方)のすもじ(『すし ちらしずし・巻きずし・押しずしなど』p22)と異なり、背割りした尾頭つきのしめ鯖を使います。 この姿ずしのメインはしめ鯖。すし飯はあくまで脇役で、詰……
日本海に面する府北部では、さば、あじ、いわし、かれいなどの魚介類が豊富に水揚げされ、中でもさばは早くから缶詰での利用が進みました。丹後地方の名物「ばらずし」も、さば缶でつくった味の濃いそぼろをたっぷり使うのが特徴です。さば缶はカレーライスの具にも好んで使われました。魚肉ソーセージのカレーとともに……
玄界灘に面し新鮮な魚介類がとれる博多では、昔から鮮度のよいさばが手に入ったら生で食べる習慣があります。10月に入り脂ののったさばが出回るとよく食べられるのが、地元で「ごまさば」と呼ばれる、さばのごま醤油です。通常の刺身より薄く切り、たっぷりのすりごまと醤油、みりんなどを加えた漬け汁につけ、わさび……
太平洋に突き出た三浦半島は水揚げされる魚種も豊富で、三浦市松輪《まつわ》漁港で揚がる一本釣りの松輪さばは鮮度も脂ののりもよく、地域ブランドに登録されています。味噌煮は、日常的に食卓にあがる料理ですが、三浦半島では2月の初午《はつうま》に行なわれる稲荷講の際、直会《なおらい》で出す行事食でもありま……
さばの煮ぐいは、いわゆるすき焼きのような甘辛い味つけの鍋です。秋から冬の脂がのったさばでつくるととくにおいしく、寒い冬には体を温めてくれます。暖かい対馬暖流と深海の冷たく栄養に富んだ海水とが混ざり合う島根県沖は、魚の餌となるプランクトンが多い豊かな漁場で、浜田市をはじめとする西部地域では昔から漁……
箱ずしは全国的には「押しずし」が多くみられますが、伊東ではさながら弁当のように、1人前ずつきれいに木箱に盛りつけたものをいいます。蓋はありますが、押さずにのせるだけ。700年以上前に日蓮聖人が伊豆に流罪になったとき、朝夕の食事を運んだ井桁《いげた》の重箱が起源といわれています。 つくるのは隔年開……
横浜市内でも農業がさかんな泉区で忙しいときに日常的につくられたのが、家で収穫した野菜と常備しているさばやいわしの缶詰を使ったカレーです。当時、肉は貴重品だったので滅多に口にすることはなく、さばカレーが一般的でした。 家にある食材ですぐにできるので夏にはよくつくり、近所からカレーのにおいが漂ってく……
白飯と鯖をアセ(ダンチク)の葉で巻いて桶に詰め、3~4日発酵させたなれずしです。あせずしとも呼ばれ、有田《ありだ》地方の秋祭りにはなくてはならないものです。棒状につくる地域もありますが、有田川沿岸や河口近くの地域では、食べやすいように切り身を使い、小さく巻いてつくる家が多いです。 秋祭りには5升……
京都では、北部の海沿いの地域を除き、生の魚はなかなか入手できませんでした。福井県の若狭から京都まで続く「鯖街道」を通ってやってくる一塩《ひとしお》ものの新鮮な鯖が手に入るのはうれしいことで、一塩鯖を酢でしめた鯖ずしがハレの日には各地でつくられました。 毎年春祭り、秋祭りにはたくさんつくり、親戚や……
県南部の嶺南《れいなん》地域は、古くは若狭国《わかさのくに》といわれ、朝廷に食料を献上する「御食国《みけつくに》」のひとつでした。若狭湾の豊富な海産物が重用され、中でもさばは若狭と京を結ぶ道が「さば街道」と呼ばれるほどの象徴的食材です。かつてはそれこそ“捨てるほど”とれ、海辺ではリヤカーから落ち……
「じゃう」とは鍋料理のことです。さばやかつおを甘辛い味で煮た魚のすき焼きで、肉類が高価だった頃の漁業地域の春の料理です。語源は地元の人でもよくわからず、炊くときの音からきているのかもしれません。 日本海に面した有数の漁港の一つである香住《かすみ》漁港は年中、豊富な魚介類が水揚げされます。さばは刺……
山添村は、県の北東部、三重県境に位置し、奈良盆地と伊賀盆地にはさまれた大和高原にあります。海からも川からも遠く鮮魚の流通が難しかった頃、家庭ではさば缶が常備されており、これを米と一緒に炊きこんだのがこのご飯で、季節を問わずつくられてきました。旨みのあるさばと煮汁がしみこんだご飯は、汁物さえあれば……
滋賀県には湖南、湖北、朽木《くちき》と地域によって異なる3種の鯖ずしがあります。京都に近い湖南では京風の発酵させない鯖棒ずし、豪雪地帯の朽木では長期間発酵させた酸味とにおいの強いなれずしが保存食として食べられています。 ここで紹介するのは湖北の鯖ずし。1カ月ほど発酵させた独特の味の生なれずしです……
播磨《はりま》の秋祭りで誰もが楽しみにしているのが鯖ずし。瀬戸内に面した東播磨では、今でも神社ごとの祭りの日に、カレンダーと関係なく学校が休校になる地域があったり、神輿をぶつけあう勇壮な祭りがあったりします。 祭りが近づくと鯖ずし用の開いた塩鯖が店頭に出回ります。多い家では50本もつくって親戚や……