にざいは黒部市など県東部の下新川《しもにいかわ》地方で報恩講や収穫祭などでつくられる、小豆や野菜を入れた具だくさんの煮物です。いとこ煮とも呼ばれますが、県内の他の地域のいとこ煮よりも、材料の切り方がやや大きめです。 「にざい」は「煮た菜」のことだといわれます。「いとこ煮」も、いとこのような間柄の……
庄内地方には、江戸時代中期から続く「大黒様のお歳夜」という行事が12月9日にあります。大黒様(大黒天)は、作物や財福を司《つかさど》る神様です。庄内民俗学会の春山進氏によると、昔は神仏も一年ずつ歳をとると考えられていたことから大黒天の年取りの祭り、つまり誕生日がお歳夜となります。また、大黒天が嫁……
秋口から春先にかけて、正月や祭り、法事などの人寄せがあるときにつくられる具だくさんの汁ものです。地域によってはのっぺ汁とも呼ばれます。味つけは醤油とみりんだけとシンプルで、あっさりしているのでたくさん食べられます。ごちそうの食べすぎで胃が疲れた正月などに、野菜がたっぷり入ったのっぺが喜ばれます。……
奈良市は奈良時代に平城宮が置かれた古都で、シルクロードの終着点として天平文化が花開いた地です。盆地に位置するため、夏と冬で気温差が激しく、夏は暑く冬は寒い気候です。 のっぺいは、12月7日に奈良の春日大社のおん祭りに食べられる、奈良市の代表的な行事食です。のっぺいと呼ばれる10㎝角の立方体の絹揚……
煮しめは県全域でつくられる行事食で、大晦日の祝い膳をはじめ節句、冠婚葬祭などに欠かせません。用いる食材が地域の特徴を表しており、秋田との県境の山間部ではぜんまいの一本煮、凍《し》み大根、身欠きにしんなどを使うのに対して、三陸沿岸の大船渡では干し魚が入ります。うま味が強いのでだし汁を使わなくても風……
祝儀にも不祝儀にもつくる新島《にいじま》のハレの煮しめで、デーコビラとも呼ばれます。デーコは大根のことです。一説では平皿に盛りつけたので「ひら」となったそうで、小さめの皿いっぱいに盛りつけ、もてなしの気持ちを表します。 そぎ(大根を細長くそぎ、冬の西風で干した干し大根)、ごぼう、にんじん、昆布、……
県北の北広島町では、葬儀や法事でふるまわれる食事のことを「おとき」といいます。おときはご飯、汁、おひら、おつぼ、白和えや酢の物などで構成されています。お膳の中で少し深めのつぼ椀に盛る料理がおつぼで、小豆と小さく切った根菜、こんにゃくなどの煮物です。 広島は安芸門徒《あきもんと》と呼ばれる浄土真宗……
県東部の岩国はれんこんが特産で、ハレの日にはれんこんを飾った「岩国ずし(殿様ずし、角ずし)」と「はすの三杯(酢の物)」とともに、れんこんが入った煮物「大平」が必ず出されるといわれます。大平はたくさんの野菜を大きな平釜でごった煮にした汁けの多い薄味の煮物です。汁ごといただき、吸いもの代わりにもなる……
フカはサメのことです。独特の魚臭(アンモニア臭)のため、煮物や焼き物には適さず、多くはかまぼこの原料となっていますが、この料理は湯引きにしてにおいを緩和し、フカのおいしさを巧みに引き出しています。フカの骨はすべて軟骨で、やわらかい肉に、真皮、尾びれ、背びれ、骨などのコリコリとした食感が加わります……
南予地方の鉢盛料理(*)の中の一品です。せん切りのこんにゃくを麺に見立て、小骨の多いエソに手をかけてつくったそぼろ、みかんどころならではのみかんの皮のみじん切り、ねぎを彩りよく飾る、ぜいたくな食材は使っていませんが、ハレの日に映える料理です。由来は定かではありませんが、小さく切ることを「ふくめ」……
県北西部の日田市大山町でつくられているごちそうです。以前は庭先で鶏を飼っていたので、正月やお盆、秋のおくんちのほか、親戚や近所の人が集まるときは1羽をつぶし、がめ煮をつくりました。今は肉屋で買いますが、昔と同じように親鳥の骨つき肉を使います。親鳥の肉はかたいですが、骨からだしがよく出て、長時間煮……