秩父地方の山間部には、トチノキが林立しており、その葉や実を食生活に利用してきました。これは、トチの葉で米を包んだ料理で、地域によって「つつっこ」とも呼ばれています。料理の呼び方や、トチの葉を包む際のわらの結び方は、それぞれの家庭によってわずかな違いがあるようです。 若いやわらかい葉を2枚重ね、米……
赤飯というと小豆と小豆の煮汁で色づけしたもち米を蒸してつくることが一般的ですが、北海道では甘納豆を入れ、もち米を食紅で色づけします。小豆を煮る手間がかからないことから手軽につくれる行事食、ハレの食事として定着しています。最近では簡単に炊飯器で炊き、日常のちょっとしたときに食べることもあります。 ……
市販の甘納豆で甘く味をつけ、食紅で着色した赤飯です。甲府市、笛吹《ふえふき》市、甲斐市、南アルプス市や県北部などでつくられていますが、同じ地域でも甘くない赤飯を食べる家もあります。スーパーでも販売されており、和菓子屋では両タイプの赤飯を扱い、客に希望を聞いて提供しています。つくるのは普通の赤飯よ……
県東部の内陸で、石川県や岐阜県と接する大野市は「上庄《かみしょう》さといも」の産地です。畑は砂質で排水がよく、盆地で昼夜の温度差が大きいので、でんぷん含量が高く煮くずれしにくい里芋ができます。いも赤飯は、もちもちとした赤飯と、味がしみてねっとりと煮えた里芋が合わさり食べごたえがあります。 秋、浄……
里芋の親いもと小豆でつくるいとこ煮です。いとこ煮は地域により小豆とかぼちゃやさつまいも、里芋などいろいろな材料でつくられます。食材がかたくて煮えにくいものから追い追い煮るところから「おいおい=甥甥=いとこ」と名付けられたなどといわれます。 このいとこ煮は親いもでつくります。親いもの「えぐみ」がお……
塩味のあんをもちで包んだ甘くない大福で、入手しにくかった砂糖に比べて塩は少量で味がつくので、昔はくず米と小豆で、大きな塩あんびんがつくられていました。塩あんは普通のあんより粘りが少なく、やや淡く白っぽい色です。全体にほどよい塩味で、噛んでいるともちそのものの甘味を感じられます。つきたてはやわらか……
湖西に位置する朽木《くつき》村(現高島市)は標高500~900mの山々に囲まれた地域です。耕地が少なく日照時間も短いため、米や農作物が貴重品で、栃の実が大事な食糧でした。乾かした実は保存がきくので、年中栃もちをついては、焼いたり、ぜんざいやあられ、かきもちにして食べました。 拾った栃の実からもち……
津軽地方の北西部・西北五地域で春から夏にかけて食べられています。小豆のあんに米粉を混ぜて蒸し、笹の葉で包んだもちです。つくるのは新しい笹の葉が出る6~7月。6月末の田植え後のお祝いのさなぶりや、祭りの前夜に行なう宵宮《よいみや》につくられました。宵宮ではお寺に持っていったりしておやつ感覚で食べま……
田原市は愛知県の南端に位置する渥美半島にあります。ここは今でこそ野菜や花などの栽培がさかんな日本屈指の農業地帯ですが、昭和43年に豊川用水が開通する以前は、大きな川もなく水が不便な土地でした。稲作より乾燥に強い作物による畑作がさかんで、小麦が多く栽培されていました。そのため小麦粉をさまざまに工夫……
府北部の丹後地域では、小豆雑煮や味噌雑煮(海藻入り、かぶ入りなど)で正月を祝います。小豆雑煮を食べる家庭の方がやや多いようです。元日に食べるか2日に食べるかは家庭によります。 小豆はその赤色が邪気を払う厄除けとされ、祝いのときの赤飯や正月の小豆雑煮などで大切に食べられてきました。自家で収穫した小……
県内の雑煮は「平もち(丸もち)で焼かない」という共通点はありますが、味つけや具が異なります。 東部と隠岐《おき》地域ではかつお昆布だしのすまし汁に、花かつおと雑煮用のもちのりをのせたのり雑煮。のりは、十六島《うっぷるい》のりという出雲市平田地区十六島地方でとれる、朝廷や将軍家へも献上されてきた天……
県西部の山内町(現武雄市)で、おくんち(秋祭り)の際のもてなし料理としてつくられてきた煮物です。おくんちには刺身やにいもじ(里芋の一種、水芋のずいきの酢の物)、がめ煮(すっぽんと野菜の煮物)、ご飯(赤飯・栗おこわ・栗赤飯)、おはぎ、蒸しまんじゅうや地酒を用意します。これらの料理をつくるときに出た……
にざいは黒部市など県東部の下新川《しもにいかわ》地方で報恩講や収穫祭などでつくられる、小豆や野菜を入れた具だくさんの煮物です。いとこ煮とも呼ばれますが、県内の他の地域のいとこ煮よりも、材料の切り方がやや大きめです。 「にざい」は「煮た菜」のことだといわれます。「いとこ煮」も、いとこのような間柄の……
県北の北広島町では、葬儀や法事でふるまわれる食事のことを「おとき」といいます。おときはご飯、汁、おひら、おつぼ、白和えや酢の物などで構成されています。お膳の中で少し深めのつぼ椀に盛る料理がおつぼで、小豆と小さく切った根菜、こんにゃくなどの煮物です。 広島は安芸門徒《あきもんと》と呼ばれる浄土真宗……
薄い醤油味の汁に甘く煮た小豆が入ります。デザートではなく、料理の一品として冷まして供されます。萩市とその周辺の地域の郷土料理で、祝いごとや法事など冠婚葬祭の膳についていました。日本海に面する萩は毛利三十六万石の城下町なので小豆は切腹してはいけないといわれ、小豆の皮を破らないよう煮上げるのが特徴で……