すまし仕立ての雑煮に甘いくるみだれを添える食べ方は、宮古市周辺のきわめて限定された地域で昔から続いてきたものです。リアス海岸の三陸沿岸は海に続きすぐ山となり、田んぼはほとんどなく米は貴重品でした。もちはさらに貴重で、雑煮と、ごちそうの代表であるくるみもちの両方を味わいたい、食べさせたいと考え出さ……
宮城県の雑煮は「ひき菜雑煮」とも呼ばれます。ひき菜とは大根、にんじん、ごぼうをせん切りにし、さっとゆで、しぼって水けをきり凍らせたもので、凍らせることでしなやかな食感になります。正月中に何度も雑煮をつくるので、凍ったまま汁に入れればよいひき菜は年末に大量につくりおきしておくそうです。県全域で使わ……
県内陸で田園地帯や丘陵、奥羽山脈にまで広がる加美《かみ》町の山間部で教わった雑煮です。この地方では、魚類を雑煮に使う習慣はなく、精進に近い雑煮が食べられてきましたが、近年では多くの家庭で鶏肉など動物性の具が使用されるようになっています。その中で、野菜類と油揚げ、凍み豆腐といった精進の雑煮が受け継……
ひたちなか市は、内陸部の旧勝田《かつた》市では自家製納豆をからめた納豆もちを、鮭が遡上する那珂川《なかがわ》の河口にある那珂湊《なかみなと》地区では焼いた塩引き鮭(新巻き鮭)をはさんだ塩引きもちを供し、同じ市内でも違った正月の食文化があります。筑西《ちくせい》市ではしょーびきもちと呼び、もちにほ……
すまし汁にもちを入れ、あぶったはばのりと青のり、かつお節を混ぜたものをたっぷりかけます。濃いうま味と潮の味がきいた雑煮です。県東部の海匝《かいそう》地域、とくに山武《さんむ》市や東金《とうがね》市、海沿いの九十九里浜周辺などで食べられています。東金市は海沿いではありませんが、海産物が集まる問屋町……
米や野菜の生産がさかんな伊勢原市小稲葉《こいなば》では、正月三が日は毎朝、里芋と大根だけのシンプルな雑煮をつくります。 雑煮は、先に神様に供える分をつくります。具の里芋と大根は暮れの晦日に正月三が日分をまとめて切ってゆでて、昔は外の納屋に保存しました。この野菜を水と味噌で煮て、生ののしもち(切り……
鶏肉、小松菜、なるとに焼いた切りもち、かつおだしのすまし仕立てが東京の雑煮として紹介されますが、23区内から奥多摩までの7地域で調べたところ、だしも具も地域によって違いがありました。 品川はいわゆる東京の雑煮ですが、板橋では小松菜と八つ頭のみ。小松菜は名(菜)をあげる、八つ頭は子孫繁栄の縁起をか……
三重県は角もち・丸もち、醤油味・味噌味、そして具の種類や組み合わせで、非常に多様な雑煮がつくられています。ここで紹介するのは伊勢平野の中心である鈴鹿市、白子《しろこ》のすまし仕立ての雑煮です。大晦日に大鍋一杯《いっぱい》の輪切りの大根を煮ておき、ときどき火を入れて三が日はその大根と角もちだけの雑……
米麹がたっぷり入った白味噌で仕立てた甘口の雑煮です。白味噌は熟成期間が短く、塩分量が少なく、日持ちのしない贅沢な食品でした。そのため、白味噌雑煮が食べられていたのは比較的裕福な家庭です。京都では、白味噌は雑煮の他にも和え物や魚の西京漬けなどの料理や、花びらもちなどの菓子にも使われてきました。 農……
土佐の雑煮は「角もちすまし汁」が基本で、場所によってだし材料と上にのせるものが違います。高知市内でも高知城下に近い中心部では、昆布とかつお節でだしをとり、里芋と潮江菜を入れるのが定番でした。ほっくりと煮えた里芋としゃきしゃきの潮江菜、煮もちにしたやわらかいもちが醤油味の汁とからまって、なんともお……
目を見張るほど大きなえびに、里芋、さつま揚げ、かまぼこ、干し椎茸、豆もやし。鹿児島の雑煮は具だくさんですまし仕立て、もちは焼きもち、そして、焼きえびでだしをとるのが特徴です。えびは出水《いずみ》市沖の八代《やつしろ》海でとれるクルマエビ科のクマエビです。これを炭火で焼き、干した焼きえびは島津家の……
関西では、もともと納豆はあまり食べられておらず、最近食べるようになったという人が多いですが、県南西端に位置する大津市の仰木《おおぎ》、坂本、千野《ちの》、伊香立《いかだち》などの地域では、昔から冬になると家庭で納豆をつくり、日常的に食べていました。とくに仰木では、今も12月のスノウ講や報恩講など……