県南西部で飛騨山地の北端にあたる五箇山《ごかやま》地方は、現在は南砺市に含まれますが、砺波平野とは急峻な山地によって隔絶されています。山々に囲まれ平坦地は乏しく、生活の場は山腹のゆるやかな斜面です。わらでしばって持ち歩くことができるほどかたい五箇山豆腐が有名で、山腹を利用した赤かぶの栽培と赤かぶ……
煮しめは県全域でつくられる行事食で、大晦日の祝い膳をはじめ節句、冠婚葬祭などに欠かせません。用いる食材が地域の特徴を表しており、秋田との県境の山間部ではぜんまいの一本煮、凍《し》み大根、身欠きにしんなどを使うのに対して、三陸沿岸の大船渡では干し魚が入ります。うま味が強いのでだし汁を使わなくても風……
郡上《ぐじょう》市の明宝《めいほう》地区で、行事やもてなしの際につくられる、砂糖が入った甘さのある料理を2種、紹介します。砂糖が貴重だった時代に、甘い汁は特別なごちそうでした。 菓子椀は、報恩講や法事をはじめ、節句のお祝いなどさまざまな行事でつくられます。具材を一つずつ味つけし、甘い汁をかけます……
薄い醤油味の汁に甘く煮た小豆が入ります。デザートではなく、料理の一品として冷まして供されます。萩市とその周辺の地域の郷土料理で、祝いごとや法事など冠婚葬祭の膳についていました。日本海に面する萩は毛利三十六万石の城下町なので小豆は切腹してはいけないといわれ、小豆の皮を破らないよう煮上げるのが特徴で……
あっさりした味つけで、だし汁をたっぷりかけるので、するすると喉を通り、茶碗に軽く盛ったご飯はすぐになくなってしまいます。県北東部で石川県と接する勝山市で、冠婚葬祭から歓送迎会まで宴席のしめで出されてきました。 勝山市は古くから繊維産業が盛んで、明治時代には工場も建ちにぎわいました。料亭では芸子さ……
徳島県では玄そばをゆでて乾燥させた後、そば殻を除いたそば粒を「そば米」と呼びます。県西部の祖谷《いや》地域は山間地でかつ急斜面が多いため稲作ができず、焼畑にしてそばをつくりました。ハレの日には粉にしてそば切りにしましたが、普段はそば米を米に見立てた醤油仕立ての雑炊や、手軽なそばねり(そばがき)を……
県南西部の内陸部にある都城《みやこのじょう》では、正月には八十八夜に摘んだお茶や干し柿とともに、いもんこんすい(里芋のお吸いもの)が出される地域があります。おしゅいもん、いもんこんしゅい、略してしゅいなどとも呼ばれ、雑煮代わりにいただきます。もちは入りません。子孫繁栄を願い元日の朝は里芋を絶やさ……
津軽地域の茶碗蒸しは年越し・正月に欠かせない料理です。卵液には栗の甘露煮の汁を加えて甘くし、大きめの器に根曲がり竹や栗の甘露煮などたっぷりの具を入れるのが特徴です。家族が好きだと、具材があればふだんからつくることもあり、正月はもちろん、日常的にも家庭で親しまれている味です。 味つけと具の種類、具……