いも串は、秋祭りや収穫祭でよくつくられます。里芋をゆでたり蒸しただけの「ゆでいも(ひょっこりいも)」もおいしいですが、蒸して串に刺し、あぶって味噌だれをつけると、甘いいもに香ばしさが加わり、ぬめりもなく食べやすいごちそうになります。手間をかけ、手前味噌と季節の香味で工夫した家々の味がありました。……
小さい里芋の塩ゆでのことで、皮はむかずにそのまま器に盛ります。やわらかくゆでた里芋の皮を指で押し出すと、白いいもがひょっくりと顔を出すことから、ひょっくりいもと呼ばれています。塩味のきいたいもはあきがこず、手軽にできるので、農繁期のお中飯《ちゅうはん》(昼食と夕食の間の間食)に好まれました。今も……
小鯛を焼いたあぶり鯛のだし汁でつくるいも煮は、西部地域の津和野《つわの》町を代表する家庭料理です。具は里芋と鯛のほぐし身だけとシンプルですが、魚のうま味が出た薄味のだし汁とゆずの香りが、里芋のおいしさを引き立てます。 いも煮の主役である里芋は、青野山《あおのやま》南山麓の笹山地区の特産です。青野……
里芋の親いもと小豆でつくるいとこ煮です。いとこ煮は地域により小豆とかぼちゃやさつまいも、里芋などいろいろな材料でつくられます。食材がかたくて煮えにくいものから追い追い煮るところから「おいおい=甥甥=いとこ」と名付けられたなどといわれます。 このいとこ煮は親いもでつくります。親いもの「えぐみ」がお……
県西部に位置する日田市大山《おおやま》町では、「いも」といえば里芋を指すくらい、生活に密着した食材です。以前は晩秋に収穫した里芋は、崖の斜面などを利用して掘った「いもがま」にもみ殻を敷いて保存しておき、田楽や煮物、だんご汁など、翌年の春までさまざまな料理に使っていました。 日頃は農作業などで忙し……
里芋をつぶして和え衣をつくり、その衣で里芋を和えます。ねっとりとした口当たりとごま風味の甘辛味噌味がおいしい料理で、県内で広く食べられています。宮崎県は里芋の生産量が全国で三本の指に入るほど多く、のたいもは秋の収穫時などにつくられてきました。 使うのは出荷できないような小いもで、きれいに洗って皮……
山梨県は山間地が多く、水利が悪く稲作に向かない地域では、昔から小麦粉を主食とし、ほうとうはほぼ全県で食べられてきました。おほうとう、のし入れ、煮ぼうと、煮ごみうどんと地域ごとに呼び名の違いがあります。畑仕事を終えて帰宅後、地粉でつくった生地と野菜をだしで煮て味噌を入れ、10分ほど煮こめばよく、短……
平野部で水田が広がる伊勢原市小稲葉《こいなば》では、11月20日はえびす講です。1月から働きに出ていた恵比寿様と大黒様が家に戻られる日なので、2人分の料理やお酒を床の間に用意し、この一年に感謝し、来年の豊穣と繁栄を願います。 お供えするのは赤飯とけんちん汁、尾頭つきの魚、なます、煮しめ、煮豆、み……