防除のアイデア

防除の工夫

あっちの話こっちの話

 

 農文協の普及職員がむらで聞いたいろいろな工夫は、月刊『現代農業』の常設コーナー「あっちの話・こっちの話」に掲載されて好評ですが、ここでは、防除に関して反響の多かった記事を2~3話ピックアップしてお届けします。

■とっておき熊退治法 熊被害の防止には音よりにおい

 石灰チッソで熊を撃退する酪農のお母さんの話を紹介しましょう。
 酪農家がもっとも心配するのは、トウモロコシをねらって熊が里に下りてくることです。においで食べごろがわかるんでしょうか? 毎年収穫の前にやられてしまいます。西郷《さいごう》村、八島節子さん(63)もそんな悩みの仲間だそうです。
 これまで熊退治にはいろいろな方法を試してみましたが、今まで大成功をしたのは「石灰チッソ」だけ。やり方は簡単で、熊が下りてきそうな、たとえば竹林や、雑草や木などが連続して倒されているトンネルのような道に、石灰チッソをふったり、畑のまわりを歩きながら周囲に撒いたりするだけ。節子さんは自分の90aの畑に2袋40kgの石灰チッソを使っています。石灰チッソを散布する時期が大切で、収穫一カ月前、穂が出た頃から散布しておくことです。
 このやり方でやってから、畑の被害がわずかになったそうです。ただ石灰チッソは雨が降ると流されて、においはなくなってしまいますから、今検討中なのが、「石灰チッソ」をペットボトルに入れて吊るしておく方法。
 「音(爆音機やラジオ)は慣れると効果はない、奴等と戦うにはにおいに絞る法が得策だ」と節子さんはいいます。

福島県西郷村より・朽木直文 1997年10月号


■柿酢でイモチ病退治! 野菜の栄養剤としても、調味料としても使えます

 
 美濃加茂《みのかも》市の福田せつ子さんに、イネの苗のときに柿酢をかけるだけで収穫までイモチ病がでないという話を聞きました。
 せつ子さんは秋になると、毎年親戚からカキをたくさんもらいます。『現代農業』に酢が作物の病気に効くという記事があったので「そうだ、たくさんあるカキを使って柿酢を作ってみよう」と思いついたのだそうです。
 田植えの7日前に、つくった柿酢を1000倍に薄めてジョウロで育苗箱の苗にかけ、一日置いて800倍の柿酢、さらに一日置いて600倍の柿酢をかければOK。だんだんと濃くしてゆくのは、苗を柿酢に慣らせるため。せっかく使った苗が柿酢でダメになるのではと心配したからだそうです。
 せつ子さんのところでは柿酢を苗にかけるようになってからイモチ病は、苗でも本田でも一度もでていないとか。
 柿酢のつくり方は、まず30個ぐらいのカキを洗わずに、ヘタだけをとってすりつぶし、ビチャビチャにします。これをかめに入れたら、三ツ折りの包装紙とビニールでしっかり蓋をして紐でしばります。そのまま暗所に置いてじっくり発酵させ約一カ月たった頃、さらしなどでゆっくり濾しながら、口の広い容器に移し、今度は空気が入るようガーゼ二重で覆って紐でしばります。再び暗所に置いて三カ月で完成。
 またこの柿酢、花やキュウリ、ナスに葉面散布すると植物が元気になるし、沈殿して上澄みをとれば料理にも使えます。
 この秋、柿がたくさん取れたら、来年のイモチ病対策にでも、柿酢を仕込んでみませんか。

岐阜県美濃加茂市より・鷹巣辰也 2001年9月号

■モミガラ利用で雑草に勝つ! 反当1t入れて何回も耕耘、効果は5年間持続

 鳥取市松原の谷口如典《たにぐちゆきのり》さんは、自然農法によるイネつくりを三〇年以上も続けています。「農業は雑草との闘い」とおっしゃる谷口さんから、モミガラと油粕を利用したおもしろい除草法を教えてもらいました。
 まず、秋のうちにモミガラを反当たり1t(約8反分)、油粕を五袋入れて耕耘します。このとき注意することは、乾土効果を高めるために「二山すき(二山耕)」にすること。耕耘した跡が白く乾いた頃(好天が続けば、一回目から3~4日後)にもう一度耕耘しておくとなおよいとのこと。そして翌年の春の田植え前にもう1~2回耕耘します。
 代かきは、水をいっぱいに入れないで八分目にしてやるのが調子がいい。爪の深さは5cmくらいにして、排土板でギュッと抑えながらサッとすませます。ギヤは「低速の三」か「高速の一」くらい。反当たり20~30分くらいでやってしまうのがコツです。そして、一度入った田んぼには二度と入らない(二回目の代かきはしない)こと。
 谷口さんがこの方法を発見したのは10年ほど前。あまりの忙しさに、本来は平らに入れなければいけないモミガラを、ムラができたままにしておいたのがきっかけです。多量にモミガラが入ったところだけ、翌年に雑草が生えなかったのです。
 試験楊に問い合わせたところ、モミガラにはモミラクトーンフェノールという雑草を抑える物質が含まれているとの答えが返ってきました。谷口さんの経験によると、モミガラ一tの投入一回で、5年間くらいは効果が持続するそうです。
 また、モミガラにはイネを硬くするケイ酸もたくさん含まれているので、谷口さんのイネはバリバリ。イモチにも負けません。

鳥取県鳥取市より・兼松昭夫 1995年1月号