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デジタル畜産編「2023年版」利用案内


有機放牧型・牛乳販売の循環型酪農、牛ルーメンにおけるメタンガス生成とその低減

■低コスト省力の周年親子放牧で遊休地活用

 北海道広尾町の鈴木牧場(鈴木敏文さん)の経営事例を収録。草地(66.4ha)の除草剤と化学肥料ゼロ、良質な堆肥で育てた甘い牧草による、牛の健康第一の循環型酪農経営である。乳用牛110頭(うち搾乳牛50頭)、肉用牛10頭、鶏30羽。2021年、日本で初めて生乳・牛肉・鶏卵の3部門でJASオーガニック認証を取得。ECサイトで卵・豚肉加工品を販売。2023年12月にはノンホモジナイズ、低温殺菌の「十勝オーガニック牛乳」の販売も始めている。


図2 標準的な繁殖雌牛放牧と新たな周年親子放牧との違い


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牛ルーメンにおけるメタンガス生成とその低減

 牛のげっぷに含まれるメタンガスの低減法も収録した。牛のメタンガスは世界の人為的温暖化ガスの一つとして批判の対象となっているが、本稿ではメタンガスの牛にとっての栄養生理からみた意味。牛にカシューナッツの殻液を投与すると、界面活性物質の働きにより牛のルーメン内のメタン産生古細菌の活動が選択的に抑えられ、メタンガスの発生が抑えられることがわかった(図)。鼓腸症の予防にもなり、飼料効率が約10%向上する(同じ量のミルクや肉を生産するのに、えさが10%少なくてすむ)。カシューナッツがら液は、がら液を含む飼料添加剤(商品名「ルミナップ」)として製剤化されている。


主要ルーメン細菌のカシューナッツ殻液への反応
上2菌種はメタンの材料となる水素やギ酸を生成する菌で殻液により細胞 壁破壊や分裂阻害がおこる。下2菌種はプロピオン酸生成に関わる菌で何ら形態変化は生じない


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