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2022年版「追録47号」企画の重点
ナガイモは現場で呼び名が混同されていることが多い。大きくナガイモとヤマノイモに分けられ(植物分類学的にはどちらもヤマノイモ科のヤマノイモ属),ナガイモは,さらに,いもの形からナガイモ群,イチョウイモ群,ツクネイモ群に分けられ,ヤマノイモはジネンジョのことである。今号では,この名称でまとめた。
さて,そのナガイモ,イチョウイモ,ツクネイモ,ジネンジョを含むヤマノイモ属の作物の作付け面積は2005年以降減少傾向が続いているが,興味深いことに,収穫量と出荷量は2019年,2020年と持ち直している。これは,ナガイモの最大産地である北海道の収量が引き上げているようだ。北海道では近年,いもが太く,収量性が高い品種‘とかち太郎’の普及が進んでいる。北海道のナガイモ生産がヤマノイモ属全体の生産を牽引しているといえそうだ。
今号では,その北海道のナガイモ栽培の基本技術や,産地の帯広市川西長いも生産組合の生産者事例(写真1)のほか,もう一つの主産県である青森県のナガイモ栽培の基本技術と生産者事例を収めた。このほか,イチョウイモ栽培,ツクネイモ栽培,ジネンジョのパイプ栽培の基本技術をまとめて収録した。
ブロッコリーは,堅調な消費,水田転作,加工・業務用需要の拡大を受けて,野菜の中で作付け面積が最も増加しており(10年で20%増),加工・業務用での国産シェア奪還に向けた取組みも進んでいる。
今号では,ブロッコリーの主要な4つの作型である,高冷地春まき夏どり栽培,夏まき年内どり栽培,暖地夏まき冬春どり栽培,冬まき初夏どり栽培について,生産量上位の産地の基本技術と生理的知見を収録した。
また,画期的な2花蕾どり増収技術を収録。L字仕立て2花蕾どり技術は,頂花蕾を収穫後,4~5月の端境期に側花蕾を収穫でき,収穫個数を約70%増加させられる。V字仕立て2花蕾どり技術(写真2)は,頂芽を摘心して11~1月に2本の側枝から側花蕾を2個収穫でき,収穫個数を約60%増加させられる。
ピーマンは,台木用品種の最新知見のほか,品質と収量を向上させつつ化学肥料を減らせる日射制御型拍動自動灌水(写真3)の技術を収録した。
ダイコンは,べたがけを用いた春どりの省力生産と冬どりの寒害軽減技術,臭いや黄変が生じない加工・業務用の新品種(写真4)を紹介した。
また,栃木県の機械化一貫体系によるサトイモ湛水栽培も収録。サトイモは高収益が期待できる土地利用型園芸作物として注目だ。