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2020年版「追録45号」企画の重点
アスパラガスは多年生の栽培植物であり,経済寿命は定植後10年程度とされる。新しい品種を導入する機会は新規作付けや改植時であり,1年生の栽培植物に比べると少ない。現在,日本国内で栽培されている品種の多くは海外からの導入品種であり,なかでも‘ウェルカム’が圧倒的シェアを誇る。しかし,アスパラガス栽培経営において規模拡大や作業分散,収穫期間の拡大などが求められる中,早晩性の異なる品種の組合わせが重要になっている。また,国内での新品種の育成や海外からの新品種の導入も進んでおり,収量性に優れ,落下種子の雑草化もない全雄品種において,太物比率なども優れたものが育成・導入され,普及しつつある。こうした流れを踏まえて,アスパラガスの品種の変遷,育種の動向,新品種の特徴など,品種・育種に関する近年の研究成果と最新情報を集めた。
アスパラガス栽培は,水田転作で広がってきたが,圃場の排水性が重要であり,立茎・灌水など株管理の技術差も大きい。温暖化対応(夏秋の高温対策など),端境期出荷も課題になっている。今号では,これらの課題に応えるために,土壌水分・マルチの色・炭資材と生育の関係,養水分吸収特性と施肥,灌水・培土の増収効果,血圧降下作用が期待されるアスパラプチンなど,生理・生態に関する最新の基本データ・基本技術を収録した。また,長期どり栽培での夏の追加立茎による省力化・春芽増収,追加立茎と親茎更新により秋~春の国産供給力を高める可能性を秘めた九州・沖縄の長期どり作型モデル,高軒高ハウスと通路幅の確保で大幅な省力・軽作業化を可能にした香川の「枠板式高うね栽培システム」(写真1)など最新の栽培システムや,排水性改善対策,「自動収穫ロボット」(写真2),安定4tどりの生産者事例も収録した。
環境制御技術が普及する中で,より現場に即した技術や,さらなる増収が求められている。トマトは低軒高・土耕・標準装備で導入可能な低投資型環境制御技術(排水と根張り,灌水と気孔の開度などの基本から,ステップごとの機器活用まで),イチゴは光合成の環境応答・制限要因を踏まえた複合環境制御による多収生産の事例,キュウリはオランダ型温度管理(午後高温・夕方急速降温)による果実肥大促進技術を収録した。
天敵利用や省力平面仕立て,青パオパオによるアントシアン軽減など,進展めざましい「甘長トウガラシ類の栽培技術」(写真3)のほか,積雪地帯のタマネギ秋まき作型で多発する枯死の原因と耐雪性の品種間差(積雪地帯の越冬栽培に適する品種)を収録した。