農業技術大系・作物編 2025年版(追録第47号)


 ダイズのほか,ゴマ,イネ,ムギ,ジャガイモ,サツマイモの各品目での新品種や安定多収・有機栽培にむけた新技術,基礎生理のほか,水田の機能アップ技術を重点的に取り上げている。

●ダイズの重要品種と農家事例,基礎技術,有機栽培

 品種では,多収の品種群として農研機構より発表された「そらシリーズ(‘そらひびき’‘そらみずき’‘そらたかく’‘そらみのり’)」(加藤信氏・農研機構作物研究部門)と福岡県で奨励品種となっている‘ちくしB5号(ふくよかまる)’(石塚明子氏・福岡県農林業総合試験場)の特性を収録した(写真1)。


写真1 そらみのりの草姿と子実の外観(ともに左がフクユタカ,右がそらみのり)

 病害虫対策では,カメムシ類などの重要病害虫対策(遠藤信幸氏・農研機構植物防疫研究部門),黒根腐病のリスク診断(赤松創氏・農研機構本部事業開発部/越智直氏・農研機構植物防疫研究部門)などを収録した。

 多収技術としては,ミヤギシロメでの摘心(千田洋氏・宮城県古川農業試験場)や黒ダイズの直播技術(藤岡茂也氏・兵庫県・(株)AgLiBright)を収録した。そのほか,発芽の安定化にかかわる研究として,短時間の冠水で出芽率が低下する種子の特徴(中尾祥宏氏・農研機構中日本農業研究センター)と,発芽率の簡易な評価法(松本憲悟氏・三重県農業研究所)を収録した。

有機栽培技術では,中耕培土による栽培体系(田澤純子氏・農研機構中日本農業研究センター)と不耕起による栽培体系(小松﨑将一氏・茨城大学)を収録した。

 また生産者事例として,狭畦密植で摘心やウネ間灌水などを組み合わせて300㎏/10aの安定生産を実現している安田大樹氏(長野県安曇野市)と,深層施肥や精密播種などによって収量を安定させている島根県・農事組合法人ふくどみ(高橋智和氏)のダイズ栽培を収録した。

●ゴマの土地利用型栽培と生産者事例

 近年研究が進んでいる土地利用型栽培に向けた生産技術として,栽培・収穫・調製の機械化体系(土師健氏・農研機構農業機械研究部門,写真2),出芽安定化技術としての「二深法播種」(丹野和幸氏・埼玉県大里農林振興センター),大面積に適した技術での安定栽培を実現している生産者事例(埼玉県・若山美奈子氏・ビーナスファーム合同会社),重要品種(加藤晶子氏・農研機構本部)を収録した。


写真2 大豆コンバインによるゴマの蒴による収穫

●イネの再生二期作と有機栽培技術

 多収技術として,気候の温暖化とともに西日本で取組みが拡大している良食味品種での再生二期作栽培(中野洋氏・農研機構中日本農業研究センター)を収録したほか(写真3),有機栽培に関連する技術として,両正条移植と直交除草体系による栽培体系(深山大介氏・農研機構農業機械研究部門),米ヌカなどの新鮮有機物による抑草効果(野副卓人氏・元農研機構北海道農業研究センター),雑草とスクミリンゴガイ対策(森重陽子氏・愛媛県農林水産研究所)など収録した。また,収穫後の品質維持に関連して,高温乾燥と胴割米の発生,発芽率などとの関連をまとめた記事(濵﨑翔悟氏・鹿児島県農業総合開発センター)を収めた。


写真3 再生二期作栽培での1期作目の収穫

●ムギの安定多収技術と有機栽培

 基本技術として,湿害圃場向けの耕うん・播種技術(渡邊和洋氏・農研機構中日本農業研究センターほか)と雑草対策(浅井元朗氏・農研機構植物防疫研究部門ほか)を収録した。そのほか,「後期重点型施肥」に関連する倒伏回避技術(水田圭祐氏・香川大学),鶏糞ペレット堆肥を利用した減化学肥料栽培などの安定多収技術(宮本寛氏・茨城県農業総合センター農業研究所),北海道で拡大している秋まきコムギでの有機栽培体系(小谷野茂和氏・道総研中央農業試験場)などを収録した(写真4)。

写真4 コムギの有機栽培での間作緑肥(白クローバ)による雑草抑制

●ジャガイモ・サツマイモの品種,重要病害虫,育種,種いも供給など

 ジャガイモは,品種や重要病害・障害,機械化技術,育種,種いも生産などを解説するカラー口絵を収録した。また,サツマイモの品種改良の歴史と将来展望(片山健二氏・農研機構北海道農業研究センター),特徴ある新品種として,‘シルクスイート’‘栗かぐや’(榎本真氏・カネコ種苗株式会社波志江研究所),‘おぼろ紅’‘ニライむらさき’(岡田吉弘氏・農研機構九州沖縄農業研究センター糸満駐在)などを収録した。

●水田の機能アップ技術

 豪雨や旱ばつなどの気象災害が頻発する現代,水田機能の向上が求められている。今回は洪水対策のための技術として「田んぼダム」(吉川夏樹氏・新潟大学)と,水田輪作の展開に向けて各農家でも取り組める簡易な地下かんがい技術(佐藤太郎氏・新潟県上越地域振興局農林振興部)を収録した。