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農業技術大系・畜産編 2016年版(追録第35号)


飼料作物の最新品種から栽培技術,維持管理まで

 2000年代以降,輸入飼料の価格が上がり続け,さらに近年の円安傾向もあり,生産現場では飼料自給への関心が高まっている。そこで長年,飼料作物の育成から普及まで携わってこられた元雪印種苗(株)の橋爪健氏に,飼料作物の最新情報を紹介いただいた。

図1 アカクローバ(品種:マキミドリ)

(以降,写真提供はすべて雪印種苗)

 トウモロコシ(図2)は北海道で子実やイアコーンの生産,都府県で二期作や混播が提案されている。ソルガム・スーダングラス(図3)はリグニンが少なく消化性が良い品種が開発された。

図2 トウモロコシ(左:ネオデント・アシル90,右:スノーデントおとは)

図3 スーダングラス(品種:ヘイスーダン)

 北海道では,チモシー(図4)で不良植生の侵入による生産量の低下が問題になっており,裸地が生じないよう早晩性が異なる品種を組み合わせたり,不良植生を抑制するオーチャードグラス(図5)の導入が試みられている。放牧地では,天北地域でペレニアルライグラスのほか,根釧地域でメドウフェスク,シバ型草地でケンタッキーブルーグラスが見直されつつある。

図4 チモシー(品種:アルテミス)

図5 オーチャードグラス(品種:バッカス)

 都府県では,イタリアンライグラスで硝酸態窒素が低下する品種が開発された。また,トールフェスクは越夏性に優れるが,嗜好性に問題がある。そのため,イタリアンライグラスとフェスク類を交配させたフェストロリウムで改善をはかる。ムギ類では,エンバクでイタリアンライグラスとの混播,ライムギ(図6)で不耕起栽培のほか,オオムギで芒のない品種が注目されている。

図6 ライムギ(品種:春香)

 暖地では,ギニアグラスで品質を一定に保ち,刈取り適期の長い品種が育成された。干ばつに強い一年生牧草のローズグラスはロールベール生産に,越冬牧草のバヒアグラス(図7)は放牧地に,多収のパリセードグラスでサイレージに,倒伏に強いセタリアは乾草に利用されている。

図7 バヒアグラス

 マメ科牧草では,アカクローバ(図1)で老朽化草地の簡易植生改良で追播技術が開発され,シロクローバ(図8)でオーチャードグラス,チモシーそれぞれとの混播に適した系統がわかってきた。アルファルファは道東でも越冬できる品種が登場し,ガレガは低温に強く,病害も少なく,永続性が期待できる。

図8 シロクローバ(品種:リベンデル)

 さらに今回,トウモロコシ,スーダングラス・ソルガム,チモシー・オーチャードグラス,イタリアンライグラス・ムギ類,アルファルファの栽培技術,牧草サイレージの調製技術について,また,牧草地の植生悪化と簡易更新技術,放牧による省力化とコスト低減,堆厩肥の有効利用と効率的な施肥方法についても整理いただいた。

 畜産でのさらなる経営改善のために,ぜひ本書をお役立ていただきたい。