伝え継ぐ日本の家庭料理

四季の行事食

年末年始以外で、各地のさまざまな行事でつくられる料理を集めました(*)。季節ごとに家族の無病息災を願う節分や夏祭り、子どもの成長を願う節句があります。農作業の進みに合わせ、田植えがすめば秋の豊作を祈り、刈り取りが終われば収穫に感謝する行事をします。暦とは別に、誕生や成人、結婚や長寿の祝い、あるいは年忌といったご先祖様も含めた人生の節目の行事もあります。これらの行事の度に人々は集まって祝ったり偲んだりす るものでした。その場のために旬のものを使い、あるいは大事に保存しておいた山菜や乾物など、その年のできのよい食材を奮発してごちそうをつくります。共同で調理をしたり、家々の味を持ち寄ったりと、地域の味が伝承される機会にもなりました。昆布巻きをちょうどよい強さで縛る加減、照りよく煮上げるこつや、膳や大皿にもてなしの気持ちをこめる盛りつけ方などは、一緒につくって食べる経験の中で受け継がれてきました。

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新春・初午・旧正月

三が日を過ぎても新春を祝う行事は続きます。七草のかゆや鏡開きのおしるこ、節分の豆でつくる香ばしい“福茶”。北関東では初午にすみつかれ、しもつかれなどと呼ぶ料理で一年の健康を願います。中国の旧正月(春節)の大根もちが定着した地域もあります。

春から夏

ひな祭りに花見、歌舞伎見物と心弾む行事が増え、外で食べる弁当も特別です。田植え後は、水に困らないようにと汁をよく吸う凍み大根の煮物を食べたりします。夏祭りにはそれぞれの名物料理があり、お盆は夏野菜の彩り鮮やかな料理でご先祖様を迎えます。

秋から冬

収穫祝いの秋祭りでは真っ赤なゆでがにや、さばずし、根菜たっぷりの煮物に舌鼓を打ちます。家々に幸をもたらす大黒様は納豆汁や黒豆ご飯の豆づくしでねぎらい、仏教行事「報恩講(ほうおんこう)」では豆腐や小豆がごちそうです。皆で一年の実りを喜ぶと、やがて年納めです。

冠婚葬祭

季節を問わない行事でつくられる料理です。大鍋でつくる煮しめは人数の融通が利きます。大皿では山海の幸が地域の自然を表現します。春雨や干し椎茸、かまぼこなどいつでもある材料でできる椀物は、丁寧に盛りつけることでおもてなしの一品になります。。

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