伝え継ぐ日本の家庭料理

年取りと正月の料理

新しい年を迎える節目に準備される料理を集めました。かつては日没を一日の変わり目とする考え方があり、大晦日の夕食に年取りのごちそうを用意する地域もあります。新潟では大晦日には早めに入浴をすませて新しい服に着替え、玄関の鍵をかけ、家族だけで年取り料理を厳かに味わい(p88)、大分では年取りには家族や親戚一同が集まり、刺身や焼き物、煮物、鍋などの料理をたっぷり用意して食事をしました(p102)。  元日の朝を迎えると、地域ごと家ごとにさまざまな雑煮を祝い(食べ)ました。具の少ないシンプルな雑煮では、もちが神聖なものに見えてきます。具だくさんな雑煮からは山海の幸をそろえた喜びが伝わってきます。なれずしやあらめ巻き、落花生の煮豆など、正月料理もところ変わればじつに多彩です。一つひとつの食材に健康長寿や豊年満作のいわれがある伝統的な正月料理には、この一年も誰もが無事で過ごせるようにと願う気持ちを、時代を越え場所を越えて伝える力があるようです。

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雑煮・もち

丸もちに角もち、醤油味に味噌味と、全国で多彩な雑煮がつくられています。もちが主役のシンプルなものから、山海の幸を盛ったものまで、お国柄が反映され、ここで紹介するのも、ほんの一部です。雑煮以外の正月のもち料理も紹介します。

いずし・なれずし

正月にはもちばかりでなく、すしを食べる習慣も各地で見られます(既刊「すし」参照)。米と魚を贅沢に使ったすしは新年にもふさわしいごちそうです。ここでは酢めしを使うすしではなく、正月に向けて仕込み発酵・熟成させる、いずしとなれずしを紹介します。

昆布巻き・煮豆

真っ黒な昆布をくるくると巻いた形を、人はなぜめでたいと思うのでしょうか。巻く魚はいろいろ、昆布ではなくあらめで巻くものもあります。煮豆も黒豆に限りません。金時豆や落花生を煮て、細かく切りそろえて煮た野菜と合わせたりもします。

なます・漬物

ごちそうがそろう正月料理に、さっぱりとして保存もきく、なますや酢漬けは欠かせません。にんじんの赤と大根の白の組み合わせが基本ですが、魚や落花生、柿で旨みやコク、甘味を加えます。真っ赤に染まったかぶや、にんじんだけの酢漬けも色鮮やかです。

煮物・煮しめ

いもや根菜、山菜やちくわにかまぼこ、魚などをたっぷり使った煮物には、子孫繁栄や長寿と健康の願いをこめためでたい食材が並びます。三が日は料理をしなくてもよいようにたっぷりつくり、煮返して食べながら正月をゆっくりと過ごしました。

魚・汁・寄せ物など

年取り魚のなめたがれいの煮つけ、「みそのつきおさめ」で大晦日に食べる豆腐焼き、雑煮とは別にたっぷりつくるけんちん汁、甘い茶碗蒸しに水ようかんと、正月には各地で個性的な料理がつくられています。それぞれいわれのある料理が並んだ正月の膳も登場します。

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