防除改善 地域・農家の事例

長野県農業会議でつくった 鳥獣害オンデマンドブック
『かしこく防ぐ鳥獣害 特徴と対策事例』

 近年、全国各地でイノシシやサルなどの動物が頻繁に出没し、作物が荒らされ、「ほとほと手を焼いている」という声が多く聞かれます。
 県土の78%を森林が占め、野生動物の多い長野県でもその被害は深刻。そんな状況のなか、長野県農業会議から「鳥獣害防除の知恵や工夫を集めた資料を作りたい」との依頼があり、農文協では、被害を与える鳥獣の特徴と対策法をまとめた冊子『かしこく防ぐ鳥獣害 特徴と対策事例』を制作することとなりました。

左:『かしこく防ぐ鳥獣害 特徴と対策事例』表紙


 制作にあたり、情報源となったのは、おもに農文協発行の鳥獣害関係の単行本、そして「ルーラル電子図書館」のデータ。特に「ルーラル電子図書館」は、鳥獣害対策の基本から現場の事例まで、膨大なデータが集められた情報の宝庫です。これらの情報の中から地域の課題に併せて記事を選択し、新たに編集して作り上げたのが今回のオンデマンドブックです。
 たとえば「サル」で全文検索すれば二百数十件の記事がヒット。ちょっと多すぎるので、検索条件を「現代農業」と「見出し・著者など」に絞ってもう一度検索
 今度はぐっと絞り込まれます。見出しをみると、「ハエ取り紙でサルの毛抜き大作戦」、「七面鳥の高笑いがサルを撃退」など現場で生れたちょっと奇抜な方法もあれば、「サルの被害が増えた理由」のように京都大学霊長類研究所の研究者による基礎的な解説もあり、多角的に情報が得られることがわかります。
 さらに、記事を絞り込んでみます。長野県内でサルの被害防止について講演したこともある井上雅央先生(奈良県果樹振興センター)の名前を加えて「サル 井上雅央」で全文検索。するとヒットした記事の全てが猿害防止柵の「猿落君(えんらくくん)」に関する記事です。
 「猿落君」とは井上先生たちが考案した柵のこと。弾力のある棒にネットが張ってあるだけのものですが、サルが登ると重みで手前に柵がしなるため、サルは中に入ることができない、というスグレモノです。安価で組み立ても簡単とあって、全国的に注目され、各地で改良型も作られています。
 今回の冊子では、話題の「猿落君」についてもっともビジュアルでわかりやすい『現代農業』99年11月号の記事「超図解 猿落君」を使うことにしました。

 もちろん、サル以外のイノシシ、タヌキ、シカ、カラス、スズメなど農作物に被害を及ぼす鳥獣の防除法についても「ルーラル電子図書館」で検索。あの手この手の豊富な情報のなかから、いくつかを選んで今回の冊子に「ユニークな防除法」として掲載しました。

 なお、冊子の編集にあたっては、各記事の執筆者の方々からの承諾とご協力を得ました。とくに、『現代農業』の記事や単行本「イノシシから田畑を守る」の著者であり、日本屈指の鳥獣害の専門家である江口祐輔先生には、全体の監修をお願いし、貴重なアドバイスをいただきました。獣害と鳥害、それぞれの防除の指針となる項目を整理していただいた「防除10か条」は、大変好評を博しています。
 課題に応じて検索し、記事を集め、編集し、出版する―。「ルーラル電子図書館」は、県や市町村など地域独自の冊子・パンフレット等の企画・制作にも使える情報検索ツールとして、自治体・指導機関のみなさんの強い味方になりそうです。
 鳥獣害冊子制作について、詳細は「地域オリジナルの鳥獣害対策冊子」を →記事全文