今月のテーマ(1)果菜類 根洗いで枯れる株がなくなる■定植時の「深植え病」、まん延中 ナス科夏秋野菜の病気は「根洗い」で防げ「この辺も産地として長いから、ピーマン植えるところには必ず菌がいる。梅雨の間にシラキヌ病やエキ病でガクッとやられる。梅雨が明けて、カッと照ってくると今度は青枯病でガッと枯れる。畑によっては3分の1しか(株が)残っておらんという畑が以前はけっこうあった」。こう話してくれたのは熊本県矢部町のピーマン農家・菅義則さん。 その矢部町でこの1~2年、以前よりずっと病気が減って「ピーマンが枯れなくなった」。その最大の理由が、定植後45~50日頃に行なうようになった「根洗い」という作業だ。 ■根洗い2年、シシトウが1本も枯れなくなったヨシオさんは連作20年以上のシシトウ(全部で370本)に立枯れが出て困っていたが、『現代農業』を見て「根洗い」を試してみたところ大成功! 2年続けて試して、2年とも、1本も枯れなかった、。――おかげで以前は1株から60パック(1パック30~35本)が平均だったのが、2年つづけて90パックくらいとれるようになった。20年以上も連作している土地で増収したのだ。 あんまりいい話だから本当は誰にも言いたくない、というヨシオさんにお願いして、その様子をうかがった。(2003年4月号) ■根洗いとは酸欠を防ぐことだった? 作物別 根洗いのタイミング 各地で根洗いをする農家が増え、質問を受けることが多くなったが、「根洗いをしたら生育が悪くなった」「徒長した」などの話も聞いている。根洗いは、特にトマト、ナス、ピーマンなどのナス科に効果が高い。だが、ナス科は、初期生育の程度がその後の生育収量に極端に影響する作目でもある。根洗いはタイミングで効果が異なってくる。 ■『現代農業』のその他の「根洗い」関連記事「根洗い」の現場を見た! (2001年8月号 ) ■『農業技術大系』でも「根洗い」技術に関する記述を読むことができます(いずれも「野菜編」から)▼30年前、根洗いをやっている農家がいた根元をよく乾かす …どの作物も根や株元からの病気は最も恐ろしいものである。悪くするとその株を枯らすこともあるのでよく気をつけなければならない。そこでその対策の一つとして、定植後50~60日くらい経過したら根元をさっとホースの水で洗い流し、その後30~40日くらいしてから根元が出るくらいに完全に洗う。野口さんのいうところによると「洗うのが遅れたら株元があかぎれのようになり、そこから腐ることが多いから必ず行なう」そうである。 ▼深植えすると、病気が出やすいという精農家が多い。 定植時の注意も、まず根を切らないように、また、根が元肥と接触しないようにしている。浅めに植えるわけだが、これはつる枯病を防ぐためにも効果がある。 植付けの高さは、鉢土の上面2~3cmを土の上に出す程度の浅植えが基本である。鉢の回りに土を覆う程度に軽く植え付け、決して手で強く押さえつけないようにする ▼研究者からもこんな指摘が… 定植時の苗の深植えは避ける。つる枯病の発生を助長したり、地温の最もある部分を利用できないからである。しかし、土壌水分が少ないときや老化苗の場合はやや深植えにする。 定植の際、苗は根鉢を壊さないようにていねいに取扱い、つる枯病の予防のために鉢面をうね面よりも1cm程度高く植える 定植のさい、床土をブロック状に固めているため土中に埋め込む必要はなく、単にソイルブロック苗を畦上に据え置いていくだけでよい。(中略)根を畦面から浮かせることで生育期間中の萎ちょう病の発生も回避できる。 ▼浅く植えると「しおれないの?」という心配には…ピーマンは疫病を防ぐために、根鉢の上4分の1くらいをうねの上に出して定植する。このため根鉢が乾きやすい。根がうね内に伸び出す前のしおれの主な原因に、このことがあげられる。(中略)ピーマンのうねは頂上が平たい形(台形)につくることを勧めたい。水が滑りにくい平たい場所に定植すると、最初の灌水で根鉢の周囲が沈降して軽い窪みが形成される。これで、それ以降の灌水では水が根鉢に向かって移動しやすくなり、効率よく根鉢を湿らせることができる。
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