農業技術大系・野菜編 2023年版(追録第48号)


2023年版「追録48号」企画の重点

・キャベツの生理と品種/作型と栽培

・ブロッコリーの品種と新技術

・ナス・ニンニク・サトイモの新技術

〈キャベツの生理と品種/作型と栽培〉

 キャベツは,野菜のなかで最も購入量が多く(1人当たり年間約6kg),収穫量もジャガイモに次ぐ第2位(148.5万t)で微増傾向。出荷量の56%が加工・業務用で,巻きが固く歩留りのよい寒玉系が増え(品種の約8割),水田転換畑での生産も拡大している。春どりの千葉,夏秋どりの群馬,冬どりの愛知など,周年供給体制が確立されているが,抽台と不結球のリスクが高まる4〜5月に品薄となる。

 今号では,そんなキャベツを182ページにわたり大特集している。このうち,生理と品種だけで90ページに及び,豊富な図版とともに国内外の最新の知見をまとめた圧巻の内容となっている。各作型の基本技術は,キャベツの主要産地の栽培の教科書とも言うべき内容で,品種選び・育苗から収穫・出荷に至るまで,ほかにはない詳しさで解説している。

 このほか,視察が絶えない広島型キャベツ100ha経営におけるスマート農機の活用技術の詳細,病害虫の耕種的防除法,水田導入時の湿害対策技術や,加工・業務用キャベツを安定供給するための技術として,生育モデルによる生育予測技術,機械化一貫体系,寒玉系キャベツの4月どり作型と低温貯蔵による4〜5月出荷を収録した。

 また,大産地・千葉県を代表する生産者事例として,銚子市のJAちばみどり銚子野菜連合会会長・間渕稔氏の夏まき冬どり栽培(YR春系305号など)を紹介し,特に温暖な銚子市東部地域や三浦半島で3〜4月に収穫するために古くから行なわれている間作技術「2番挿し」(写真1,「冬春どり栽培」にて解説)も収録した。


写真1 キャベツの3〜4月収穫のための間作技術「2番挿し」
銚子市東部や三浦半島に古くから伝わる

〈ブロッコリーの品種と新技術〉

 前号で各作型の基本技術を紹介したブロッコリー。今号では,生理と品種を68ページにわたり特集した。「性状と分類」「品種の発展と形態変化」「品種生態と環境反応」(写真2),「障害,病害虫と品種」,いずれもブロッコリーの基礎研究の集大成で,キャベツの生理と品種同様,ほかでは読めない貴重な内容となっている。


写真2 ブロッコリーの低温遭遇とアントシアンによる紫色着色
左から,アントシアンの出やすい品種,アントシアンレス品種,通常の品種

 このほか,近年の廃プラスチック排出量削減の潮流や軽労化の観点から再評価されている生分解性マルチ,水田での輪作体系(石川県の安井ファーム),加工・業務用ブロッコリーの直播栽培体系(JAおとふけ),暖地と冷涼地の両方に目配りした「重要病害と対策」,病害虫の被害とともにブロッコリーの品質低下の大きな原因となっている「生理障害と対策」を収録した。

〈ナス・ニンニク・サトイモの新技術〉

 ナスは台木用品種の病害抵抗性と生育特性の最新データ,促成ナスの上物収量を増やし10a当たり17万円の収益増が見込める日没後加温技術,ニンニクは復活する産地・北海道での露地(無マルチ)栽培(写真3),サトイモは拡大する疫病など主要病害と対策を収録した。


写真3 北海道ニンニク露地(無マルチ)栽培のフレコンバッグによる収穫作業