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米は家庭用の消費量が減り,価格も下がっている一方,レストランやコンビニ弁当など業務用の消費割合が増えている。消費者の安全意識の高まりとともに,実需者から求められる品質水準も上がっており,米は今まで以上に栽培技術のみならず,収穫後技術(ポストハーベスト)が重視されている(図1)。
図1 左が計量機,右が色彩選別機
(写真撮影:依田賢吾)
そこで今回,この分野の第一人者である元岐阜大学教授の後藤清和博士と(株)サタケの三上隆司博士に監修いただき,(株)サタケ第一線の技術陣を中心に米の収穫後技術について執筆いただいた。
収穫後技術は文字どおり収穫が終わってからの技術であるが,「いかに収穫時の品質を落とさないで米を消費者まで届けるか?」を軸に技術が成り立っている。そのため,「どのように米を収穫するか?」から工程が始まるともいえる。米は含水率が高すぎると貯蔵中に嫌気呼吸による発酵や微生物の繁殖を引き起こすため,可能な限り適期に収穫し,速やかに乾燥・籾すり・精米する(図2)。
図2 ケットの手動水分計で乾燥機の玄米水分を計測
(写真撮影:依田賢吾)
近年,光センサーやデジタル式工業カメラで大量の米粒を1粒ずつ認識して着色粒,ガラスなどの異物を分離する光学式選別機が普及している。また,米ぬかに含まれる脂質が酸化して脂肪酸となり,食味が低下するため,残留ぬかをできる限り取り除く無洗米が開発され,大量炊飯を行なう外食産業を中心に普及している。
レストラン,コンビニエンスストア,給食センターなどでは,計量,洗米,水加減,浸漬,加熱,蒸らし,ほぐしの工程を一元化した炊飯システムが利用されるようになった。米の食べ方も多様化が進んでおり,健康維持増進のための生体調節機能が注目されている。炊飯の手間を省くためのパック米飯や小麦アレルギー対策としての米による代替品なども製造されている(図3)。
図3 生米を炊飯・乾燥した「アルファ化加工米」。お湯や水を注いで一定時間置くとごはんに復元。非常食や携帯用に
そして,最後に米の基本的な構造,成分と食味である。米の形態と内部の特徴,栄養成分,おいしさについて(株)サタケの佐々木泰弘博士に解説いただいた。
一方,今回はイネの基礎的な知見についても収録した。「イネの形態と発育」コーナーではリアルな図を豊富に使いながら,種子と発芽,苗の生長と苗質,移植と活着,葉,茎,分げつ,根,穂の分化と発達,出穂と開花・受精,登熟について解説している(図4)。東北大学教授の星川清親博士が1975年に執筆された記事を福島大学教授の新田洋司博士が45年ぶりに改訂。
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以上のほか,イネが水田で生育するしくみについて根の解剖学的観点からの考察,べんモリ被覆種子を用いた湛水直播技術,イネ直播栽培での雑草防除についても収録。
図4 主茎から分げつが出ているようす(普通栽培のイネの一例)
分げつからも分げつが出ている
(10)(11)は枯死した分げつ
A部分からは普通分げつが出ない
B部分から分げつが出る(分げつ節部)