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近年の猛暑の影響により,花卉の多くの品目で高温障害がみられるようになった。着花不良,着色不良などが発生すると,出荷可能本数が減るほか単価の下落にもつながる。
今回の追録では,おもに施設栽培花卉での花ごとに生じる高温障害の症例と,その対策方法を紹介する。高温障害では,スプレーカーネーションの高温によるブラインドの発生条件と対策について,酪農学園大学の森志郎氏に(写真1),高温期の施設バラ着色不良や生育不良の対策技術を愛知県農業総合試験場の保富正行氏に紹介いただいた(写真2)。また,さまざまな高温対策技術を複合的に使用する方法や換気の最新技術を農研機構農村工学研究部門の石井雅久氏に(写真3),カーネーションのLEDを用いた生育調節技術を静岡県立農林環境専門職大学名誉教授の稲葉善太郎氏に紹介いただいたほか,ヒートポンプを用いた外気導入など複合的な温暖化対策事例として栃木県の施設バラ農家・田邊正剛氏の栽培事例を栃木県下都賀農業振興事務所の篠崎文之氏に紹介いただいた。
写真1 カーネーション品種:チェリーテッシノのガク割れ(写真提供:森 志郎)
花芽分化期に1週間の高温が続いたため生じた
写真2 白バラ品種:アヴァランチェ+の正常な切り花(右)と,花色が変化してしまった切り花(左)(写真提供:保富正行)
収穫後の高温によって変化が生じてしまう
写真3 冷房効率を上げるためにヒートポンプに送風ファンとダクトを設置したファレノプシスのハウス(写真提供:石井雅久)
より安定した生産や,消費現場からの要望(土ごと焼却処分したい,環境に配慮した用土を使用したいなど)の実現を目指し,鉢もの用土の素材や設計方法が進歩している。
今回の追録では,目的ごとの用土素材と,現在求められている用土の設計方法について株式会社花ごころの河合秀治氏に紹介いただいた。また,新たな培養土を用いた栽培技術の最新研究もまとめた。竹粉や食品リサイクル堆肥を用いた花壇苗の栽培技術について愛媛大学の札埜高志氏と兵庫県立大学の大藪崇司氏に(写真4),焼却可能なヤシ資材を用いた培養土でのカーネーションやカランコエの栽培技術を埼玉県農業大学校の石川貴之氏に,木材チップとフルボ酸を合わせた資材「DWファイバー」(DAIKEN,写真5)を用いた培土でのシクラメンの栽培技術を長野県野菜花き試験場の佐藤智博氏に紹介いただいた。
写真4 上が標準培地,下が竹粉配合培地で栽培されたマリーゴールド(写真提供:札埜高志)
左から,緩効性肥料が3g,6g,9g,12g配合されている。肥料の量が多ければ竹粉配合培地でも標準培地と変わらず生育した
写真5 木材チップをフルボ酸に浸漬させた資材「DWファイバー」(DAIKEN)(写真提供:佐藤智博)
2024年の労基法改正によりトラックドライバーの労働制限が施行され,新鮮な各地の花を届けることがむずかしくなった。以降,花卉のさまざまな流通段階で効率化対策が考案されている。そのうち生産現場で取り組むことができる対策の一つが,開花日・収穫日予測である。これにより,収穫予定の情報をいち早く市場に届けることができるほか,出荷目標に向けたより具体的な開花調整が可能になる。
今回の追録では開花日・収穫日や収量予測の最新技術を集めた。トルコギキョウ切り花の収穫日予測とそれを基にした計画生産技術について農研機構野菜花き研究部門の福田直子氏に,気象データを用いた小ギクの収穫期予測技術について奈良県農業研究開発センターの虎太有里氏に,温室バラ切り花の自動計数・モニタリングシステムについて東京大学の篠田理沙氏と岡山大学の元木航氏に,気象データを基にした作柄および需給動向の分析について日本気象協会の鈴木はるか氏に紹介いただいた。
前号で特集した減農薬技術への関心は依然高く,新たな技術の開発と普及が待たれている。今回の追録では,微酸性電解水を使用したバラの灰色かび病対策について山形大学農学部の長谷修氏に,UV-Bを使用したデルフィニウムのうどんこ病対策について北海道立総合研究機構の藤根統氏に紹介いただいた(写真6)。
写真6 UV-B照射と薬剤散布を組み合わせて防除したデルフィニウム(左)と,薬剤のみで防除したデルフィニウム(右)(写真提供:藤根 統)
薬剤をゼロにはできないが,散布回数の削減につながる
花卉の種類や栽培する時期によって,光合成効率を最大化させるための生育環境や,花芽が正常に分化する環境は異なる。さまざまな施設花卉品目でそれらが明らかになり,経済性も踏まえた施設管理方法の見直しが検討されている。
今回の追録ではアルストロメリアの夏季の管理について山形県農林水産部農業技術環境課の酒井友幸氏に,スプレーギクの冬季の管理について栃木県農業総合研究センターの吉野健太氏に紹介いただいた。
花卉の単価は変動幅が大きいため,花卉農家の多品目経営化が進んでいる。なかでも複合品目の一つとしてヒマワリに注目が集まっている。理由としては,キクの栽培技術が応用できること,暑さ・干ばつ・病害虫に強いこと,夏の定番であることなどがあげられる。
今回の追録では,父の日需要などで夏場を中心に市場取引が伸びているヒマワリの育種動向についてタキイ種苗株式会社の池口英明氏に(写真7),姫ヒマワリ(キクイモモドキ)の特徴や栽培技術について株式会社ミヨシの松永伸也氏に紹介いただいたほか,姫ヒマワリやルドベキアなどのキク科の多年草を夏に出荷している群馬県中之条町(旧六合地区)の産地事例を編集部でまとめた(写真8)。
写真7 上を向いて咲くヒマワリの品種:サンリッチUPオレンジ(タキイ種苗,写真提供:池口英明)
写真8 群馬県旧六合地区などで栽培されている姫ヒマワリ品種:ブリーディングハーツ(撮影:編集部)