農業技術大系・花卉編 2021年版(追録第24号)


●再注目のカーネーション栽培

 およそ12年ぶりにカーネーションを大幅改訂。カーネーションは国内流通量が約6億本と,キクに次ぐ大品目だが,2012年に輸入本数が国産を上回り,2020年の全体に占める国産の比率は36%(約2.4億本)まで減少している。ところが,輸入によってカーネーションの周年安定供給が確立したことで,近年,国産が再評価。輸入が増えるにしたがい価格差は広がり,2016年以降は国産が1本当たり約15円高くなっている。カーネーションといえば以前は赤系のスタンダードタイプが多くつくられ,母の日シーズン中心の需要だったが,近年は普段づかいの花としての需要が周年に拡大し,色や花形・タイプも多様で,暖地と高冷地・寒冷地とで産地リレーによって一年中出荷されている。課題は産地の切り替わり時期(母の日前後の5〜6月と秋の10〜11月)の品質向上と暖房代。カーネーションはかつてのスタンダード系からスプレー系に品種が移るなかで高い栽培温度が求められるようになった。低くなると生育の遅れ,茎の強度低下,発色不良となるが,高温管理は経営を圧迫する。そこで注目技術の一つが日没加温。需要期の3〜5月の採花本数・品質を左右する12〜3月の夜温を17〜21時の4時間のみ17℃に上げることで1株当たりの本数が増え,品質も上がり,粗収益は2割増となる(写真2)。このほか,温暖化による夏秋期の高温による減収なども課題。

 今号は,それらの課題にむけての研究と全国の農家実践を収録した。

写真1  人気の切り花品種‘ミニティアラ’シリーズをポットカ ーネーション専用に育種した‘おもひではなび’
(品種登録出願中,写真提供:真鍋佳亮)


写真2 EOD 区 EOD区(日没加温)のほうが慣行区よりも側枝の伸長・花芽発達の速度が速い (写真提供:加藤智恵美)



慣行区



<ヤマモガシ科>

●プロテア(Protea)

ヤマモガシ科は実が固い殻に覆われて,山火事に耐えて種子を守り,乾燥や火事の刺激で裂開し種子を散布するという特色をもつ。プロテアはヤマモガシ科の代表的な種で,日持ちがよく,花の変化も楽しめる



キングプロテア 開花期:3〜9月



ピンクアイス開花期:7〜3月



ニオベ(*)開花期:3〜9月


● ピンクッション(Leucospermum:リューコスペルマム)

針刺しにピンを刺したような花の形状からピンクッションと呼ばれており,近年人気



ハイゴールド(*) 開花期:2〜6月



サクセッション(*) 開花期:2〜6月

写真3 南半球原産ネイティブフラワーの代表種・ヤマモガシ科の仲間(写真提供:海下展也,*の写真は(株)シマトレーディング)

●ネイティブフラワーの国内生産

 いま,南アフリカやオーストラリア原産のネイティブフラワーがインテリア志向の消費者を中心に人気だ。見た目のインパクト大で,ドライフラワーにしてアレンジメントやスワッグ(壁掛け)などに最適。近年,鉢ものもよく出回るようになった。栽培の難易度は高いが,国内でも栽培が広がりつつある。南アフリカ南端と西オーストラリアは5億5000万年前には地続きだったので,植物としては,それぞれのネイティブフラワーは兄弟である(写真3)。愛知県田原市でプロテア類などをつくる渡会卓也さんは,鉢もののほか,自社でドライフラワーにまで加工して販売している(写真4)。



写真4 愛知県・渡会卓也さんがつくったドライフラワー乾燥機とその内部
草姿のバランスが悪く出荷できなかった鉢ものはドライフラワーにする

●染め花の実際

 以前は,花を染めることは邪道であるといわれてきた。しかし,染め技術は農家や専門店を中心に日々深化し,最近はさまざまな場面で見かけるようになった。元々そういう花色だったのではと思えるほど自然な染め花から,1花を複数の色に染め分けたものまで流通している。売る側は,染め花を導入することで,花色のバリエーションを増やすことができる。この「染め花・ドライフラワー加工など」のコーナーでは,市販の着色剤と品目との相性をはじめとした使用法の基本から応用までを収録した。



写真5 切り花着色剤の利用法
赤と黒のバラ 花茎の末端を割って片方のみを染めた(写真提供:二渡希望)





花茎を分割し,異なる色を吸わせることで多色に染めることもできる(写真提供:中島聡史)

●沖縄のトルコギキョウ,冷涼地のダリア

 トルコギキョウは大輪系品種(写真6)が広まって新興産地が生まれている。とくに沖縄は温暖な気候を活かして,台湾に代わる産地として輪ギクからの転換が進む。

 ダリアは東北の露地栽培を解説。課題の露心花(筒状花が現われる)対策にも触れている。



写真6 左:大輪フリンジ品種の開発と,1茎1花になるような仕立て技術で価値(価格)が向上したトルコギキョウ
     2002 年ころの高品質な切り花(写真提供:八代嘉昭)

   右:2014年撮影コサージュ(R)シュガーホワイト(写真提供:福田直子)


●伝統品目の生産

 季節の行事やお祭りに欠かせない品目,アサガオとホオズキづくりについて収録。江戸の園芸文化を代表するアサガオは,変化朝顔の歴史から栽培までを解説。

 ホオズキは出荷タイミングを外さない栽培管理の実際を紹介(写真7)。


写真7  静岡県・仲田恒雄さんがつくったホオズキの実を選別する器具 (写真提供:山西央)