農業技術大系・花卉編 2020年版(追録第23号)


●トルコギキョウ新技術

 トルコギキョウは,冠婚葬祭の業務用から,普段使いのスーパーのパック花まで多用途に使われ,需要は安定している。ただし,農家にとっては,「ロゼット化しやすい(咲かない)」「栽培環境によって品質が落ちやすい」など,つくりこなすのが難しい花のひとつでもある。今号は,それらを克服するための大きな苗(RTF苗など従来の定植苗よりも生育を進めた苗)活用を中心とした研究(図1,2)や,生産者が市場関係および小売り関係者に花の色味を正確に伝えるための色味表とその使い方(図3)を収録した。


図1 RTF苗と慣行苗(本葉2対半展開苗)


図2 RTF苗活用技術による開花期の草姿


簡易カラーチャートの使い方

1)本カラーチャートを測定する花卉の花弁にあてる

2)測定は花の外周部花弁を比較する

3)最も近い色の番号を選択する。これが花弁色値となる

①「1.2」と判定,②「1.3」と判定,③「1.5」と判定,④「2.5」と判定,⑤「3.3」と判定



簡易カラーチャート(トルコギキョウ版)

トルコギキョウの花弁色に合致したRHSカラーチャートのなかからピンク系20色を採用し,判定しやすくした。現場でつかえるように,ラミネート加工を施した。*RHSカラーチャートは英国王立園芸協会が作成しているもの

図3 共通のものさしで色味を共有できる「簡易カラーチャート」(トルコギキョウ版)

生産者が市場関係および小売り関係者に花の色味について情報発信することが最重要と考え,目視でも簡易に判定できる色味表(カラーチャート)をつくった

●冷涼地ダリア

 人気のダリアは,複合経営で露地栽培が多い東北での生産を特集。近年,キクで導入されている露地電照の技術を導入するなど,高品質化が進んでいる。夏場の病害虫リスクを回避して良品多収する秋田県・佐藤良一さんの「刈込み仕立法」も必見である。

●ホームユースフラワーで稼ぐ

 近年,スーパーでの花卉の売上げが伸びている。ふつう,多くの農家は2L中心の高単価な出荷規格をねらって生産しているが,葬儀や祝事などの業務需要が減り,量販用の家庭需要が伸びていることなどから,今後はコンパクトなサイズの花生産が増えていくかも知れない。

 また,切り花でも鉢花でも関心が高いわい化剤の情報を収録。「植物を小さくする」だけでなく,部分的な徒長を防いで草姿の調和をよくしたり,切り花の品質を高めたり,花芽分化の促進や緑地管理の省力化など多岐に利用される(図4)。多くの品目に対する利用例を掲載した。


①草姿

ペチュニア(品種:バカラレッド)に生長抑制剤処理をしたときの草姿(散布処理して28日目)

*ビーナイン以外の植物成長調整剤はペチュニアでは適用がない



②花色

ペチュニアの複色星形模様の品種‘スターレッドアンドホワイト’に各植物成長調整剤を処理したときの花のようす。処理して14日目ごろ。スケールバー=10mm

*ビーナイン以外の植物成長調整剤はペチュニアでは適用がない

図4 植物成長調整剤(わい化剤)がペチュニアの草姿と花色へ及ぼす影響

●ファレノプシス新技術

 ファレノプシスは祝事から普段使いまで幅広く利用されるが,生産コストが高い。LEDやヒートポンプ冷房,超微粒ミストなどを使ったファレノプシスの省エネ栽培技術を集めた。

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 そのほか,10年程度かかるリンドウの育種を3分の1に短縮できるようになったウイルスベクターを利用した「高速開花技術」(図5)や,従来の仏花イメージを打破するスターチス,キク,テッポウユリの育種。バラでは程よい長さの花茎を多収できる「切り上げアーチング方式」の解説。カーネーション,スイートピー,テッポウユリ,緑化植物の生産者事例,ラナンキュラスのウイルス,人気の多肉の培養苗生産の研究などを収録。



図5 ALSVベクターを利用したリンドウの高速開花技術

上:育成中のリンドウ実生苗。左側半分はALSV-GtFT接種個体,右半分は非接種個体

下:接種後約5か月の開花実生苗