農業技術大系・土肥編 2018年版(追録第29号)


作物・土壌の活性化資材

 アミノ酸・植物ホルモン・ミネラル類などの肥料・生理活性剤から,粘土鉱物・腐植物質・機能鉄などの土壌改良・活性材,枯草菌・酵母菌・放線菌・光合成細菌など単一~複合の微生物資材まで,計33製品を第7-(1)巻と第7-(2)巻に収録。以降,それぞれの解説の冒頭は記事タイトルの製品名,文末のカッコ内は著者の所属と氏名(敬称略)。

〈肥料・土壌改良材〉

▼甘彩六花シリーズ

 7種類の発酵液肥を使いこなす。甘彩六花で光合成促進,甘彩で余剰肥料吸収,六花で生殖生長促進,健花でカルシウム効果,活根彩果で新根生長促進,大地豊彩で養分転流促進,七彩で果実の色づき向上(甘彩六花株式会社・林大吾)。

▼アラガーデン

 配合の5-アミノレブリン酸(ALA)はクロロフィルなどになるアミノ酸で,気孔開度増大,窒素代謝促進,葉緑素含量の維持,新芽生長促進,光合成促進などの生理活性のほか,塩類・低温に対する耐性を高める作用がある(株式会社コスモトレードアンドサービス・岩井一弥,西川誠司)。

▼アルギット

 北欧の海岸に自生する海藻の粉末資材で,アルギン酸,微量要素が豊富に,バランスよく含まれている(図1)。根圏微生物を豊かにし,根毛の発生や土壌の団粒化を助ける。作物の健全な生育に役立つ(神協産業株式会社・新鞍宏)。

図1 アルギット

▼EB-a

 ポリエチレンイミン系の鎖状高分子化合物で土壌の団粒形成を促進。その団粒は降雨,灌水や乾燥では容易にこわれず,長期間にわたって安定した効果が持続する。有機質資材との併用でさらに効果がアップ(林化学工業株式会社・池田秀敏,荒木進)。

▼イタヤ・ゼオライト,有機ゼオライト培土

 山形県・板谷産のクリノプチロライトを主成分とする天然ゼオライト(図2)。そのCECが高く,均質で良質な特性を活かし,鹿沼土とともに主原料として,各種土壌改良資材,有機肥料成分を配合した培土を開発(ジークライト株式会社・武山芳行)。

図2 イタヤ・ゼオライト

▼息吹農法グレードLD

 生物の根源である呼吸作用から着想された酸素欠落型磁性触媒による機能性土壌処理剤。わずかな量を土壌表面に散布するだけで土壌の団粒化が促進され,土壌機能に変化を与え,植物の健全な育成を助ける(汎陽科学株式会社・井上錦一)。

▼MR-X

 プランクトンや海草などの海洋性堆積物の抽出液で,各種微量ミネラルやフミン酸とフルボ酸を含有。リン酸の吸収が高まるとともに病気の発生も少なくなり,作物の活性も高まるので品質,収量とも向上する(株式会社フミン・八木澤勝夫)。

▼オルガミンシリーズ

 ブラジルで魚,糖蜜,ダイズ,麦芽などを発酵させ,その抽出液にマグネシウム,マンガン,ホウ素,亜鉛,モリブデンを添加。製品としてアミグロー,エネルジック,オルガミンDA,エネルジックDA,マイグローHiがある(株式会社パルサー・インターナショナル・井上倫平)。

▼グリーンビズ・カリュー

 粘土などを約1,000℃の高温で焼成・発泡してつくられた,粒状の多孔質セラミックスの土壌改良材(図3)。保水・透水・通気性に優れ,土壌中の微生物も活性化し,無機100%の安心・安全な材料である(小松精練株式会社・山上大智)。

図3 グリーンビズ・カリュー

▼正珪酸(せいけいさん)

 作物に吸収されやすいオルトケイ酸が主成分の酸性水溶液。ケイ化細胞が増殖して光合成促進,根張り向上,耐病虫害性向上,組織強化による日持ち改善,葉が立つことによる受光性の向上が期待できる(有限会社グリーン化学・馬渡ゆかり)。

▼地力の素

 腐植堆積物カナディアンフミンを採掘・製品化。腐植酸のはたらきで土が団粒化し,CECが非常に高いので土壌の保肥力を上げる。フルボ酸などの可溶性成分(図4)が土壌の微生物や植物の根を活性化させる(株式会社ピィアイシィ・バイオ・穂満孝基)。

図4 腐植物質に含まれるフルボ酸の水溶液

▼麦飯石

 麦飯石は土壌のイオン反応を活発にする石英斑岩の一種であるが,高価なため,麦飯石を含む石英斑岩と特定流紋岩を組み合わせ,麦飯石に匹敵するイオン交換機能を発揮する,低価格な土壌活性剤を開発した(高知大学・石川勝美)。

▼ベントナイト

 コロイド粒子の吸着能力と長い保持力で施肥のむだがなくなる粘土鉱物。粒子の構造によってリン酸固定が進みにくく,ケイ酸分が75%以上あるので病気に強く,各種ミネラル成分で作物の品質も良くなる(有限会社アグリクリエイト・齊藤公雄)。

▼ミヨビゴールド

 アブシジン酸は生育抑制の植物ホルモンとされているが,天然型アブシジン酸は栄養生長も生殖生長も促進し,ほかの植物ホルモンとの相乗効果もあり,カリウムなどミネラル類の吸収・効果発現も促進する(有限会社バル企画・禿泰雄,禿英樹)。

▼焼赤,焼黒

 土の粒子構造を微細に均一化した機能性土(図5)で,交換性マグネシウム,可給態鉄などのミネラル分に富む。陽イオン交換容量が高くて保肥力に優れ,土中でカビなどの菌の繁殖を抑制し,水質浄化効果も高い(有限会社ソルチ・中村一女)。

図5 上と中央が焼赤,下が焼黒

▼リンマックス

 活性汚泥法で処理された汚泥を堆積・腐熟させ,窒素・リン酸・カリ肥料を加えて造粒。製造過程で高温にさらされていないので生きた微生物が内在。施肥と土つくりが同時にでき,リン酸の利用効率が高い(エムシー・ファーティコム株式会社・小林孝志)。

〈微生物資材〉

▼アーゼロン・C

 細菌,放線菌,糸状菌,酵母菌など多種多様な有効清浄微生物群アーゼロンを,鶏糞,高炉スラグ,製糖副産石灰などに使用して熟成発酵。好気性・嫌気性菌が共存共栄し,増殖と代謝できる組成になっている(日本ライフ株式会社・門馬義幸)。

▼EM

 働きの異なる数十種以上の有用微生物が土壌中で共存共栄し,連動し合い,相乗効果を発揮。各種の酵素=生理活性物質・ビタミンなども含まれ,植物の生長に直接的あるいは間接的にプラスの影響を与える(株式会社EM研究所・黒田達男)。

▼Mリンカリン(MリンPK)

 リン酸化合物への作用の強い微生物群と酵素を選び出し,リン酸,カルシウム,硫黄,カリウム,塩素,有機栄養源(おもに米ぬか)の存在下で,活発にリン酸に作用するように培養された微生物酵素資材である(株式会社ミズホ・高田義彦)。

▼オーレスPSB,育苗用G2

 オーレスPSBは光合成細菌が水稲で根腐れを引き起こす硫化水素や有機酸・アミン類を無害化。育苗用G2はVA菌根菌がリン酸やミネラルの吸収促進を図り,根の内部と外部の両面から作物の生育を支える(松本微生物研究所・猿田年保,山田直樹)。

▼コフナ

 酸素がない状態でも能力を発揮する嫌気性微生物が主体であるものの,セルロースの分解能力が高い微生物も含まれ,好気・嫌気両方の性質を兼ね備える資材。有機物を腐植に変え,土壌微生物層を多様化させる(ニチモウ株式会社アグリビジネスチーム)。

▼さんさくん

 農業で有効な好気性菌体群をカキ殻,放線菌のえさとなるカニ殻(キチン質),海藻繊維,米ぬか,ヤシ焼成灰,バーミキュライトなどに添加。土壌機能調整力が強化される有機肥料(複合肥料)である(株式会社北興物産・江井兵庫,但野邦芳)。

▼スーパーE・R

 自然由来の植物を原料に強力な活性をもつ酵素と微生物により培養。多様で活性のある微生物群が病害虫に強い土壌環境をつくり出し,短期間での土壌改良を可能にする。土壌の団粒化や植物の健全な生育を促進(株式会社サンルート・曽根美奈子)。

▼すくすく丸

 光合成細菌の紅色硫黄細菌1種と紅色非硫黄細菌3種を混合培養。根いたみを起こす毒性物質を取り込んで作物の根を活性化し,クロロフィルの前駆物質であるδアミノレブリン酸を分泌して光合成を促す(株式会社のうハウ・三浦秀一)。

▼ソミックス,シバックス

 硫黄酸化菌群を豊富に含み,その働きによって施用後も持続的に酸基を土壌中に放出し,作物の生育環境を酸性域に保つ,製品pHが酸性の有機資材ソミックス,ゴルフ場用シバックスを開発した(エムシー・ファーティコム株式会社・小林孝志)。

▼土ビタミン

 珪藻土の微細な孔に土壌菌を大量に吸着させた資材(図6)。主体であるバチルス・サブチルス(枯草菌)は有機物を分解しながらさまざまな酵素を生成して土の生態系を整え,団粒構造を形成し,有用微生物を増やす(大道産業株式会社・山口俊明)。

図6 土ビタミンの電子顕微鏡画像(左)とバチルス・サブチルス(右)

▼TB21

 単一の枯草菌資材(図7)。抗生物質イツリンAと界面活性物質サーファクチンを分泌し,その相乗効果で真菌(カビ)を抑制。鉄輸送化合物シデロフォアの分泌で植物の生長を促進。リン酸溶解能,発酵促進能作用も(株式会社井手商会・井手浩智)。

図7 TB21

▼納豆菌の力

 土壌の中で活性の高い複数種の枯草菌を選別ブレンド(発根促進物質を出す菌を配合)。土壌微生物のバランスを短期間で圧倒的に整え(病原菌の菌密度を低下させ),作物を育てやすい土へと改善する(株式会社エーピー・コーポレーション・斎藤太一)。

▼バクタモン(BM)

 糸状菌のアスペルギルス,ムコール,リゾープスに酵母菌のハンセヌラを組み合わせた微生物資材(図8)。肥料を有機態に変えて高度な有効要素をつくり,世代交代で徐々に自己分解して代謝産物を土壌に還元する(岡部産業株式会社・岡部雅子)。

図8 バクタモン(BM)

▼ビオライザー(ワラ分解王)

 10~50℃程度の幅広い温度域で活性をもつ,セルロース分解菌,リグニン分解菌など8種類の微生物を純粋培養し,良質な有機物,バーミキュライト,木炭で増殖・定着させた有機物分解促進剤である(片倉コープアグリ株式会社・増村弘明)。

▼VS菌

 林床で有機物を分解する放線菌・細菌・糸状菌と同様の微生物群である。その担体である国産バーミキュライトは土壌の透水性・通気性・保肥力に改良効果があり,難溶性なので半永久的に効果が持続する(ブイエス科工株式会社・佐野教明)。

▼ライズ

 酵母などの好気性菌と乳酸菌などの嫌気性菌を含む多種の有効微生物を,新生代第三期の貝化石と有機質に発酵培養させたもの。ケイ酸に富み(26%),カルシウム,苦土,マンガンなど多くのミネラル類も含んでいる(有限会社花巻酵素・佐藤一郎)。

▼Land-Max(ランドマックス)

 放線菌はキチナーゼを生成して病害虫の細胞壁や卵殻・外殻のキチン質を溶解しつつ,植物の根を刺激して抵抗力を強化する。トリコデルマ菌は抗生物質やセルラーゼを生成して病害菌の侵入を防止する(オーガニック・ランド株式会社・一百野昌世)。