野菜に含まれている栄養素やさまざまな微量成分が、ガンをはじめとする生活習慣病などの予防に重要な働きをしていることが明らかになり、あらためて野菜の大切さが見直されつつある。そして、おいしくて安全な野菜を食べたいという要望が広がるなかで、直売所や朝市、産直など、消費者と直結した販売に取り組む産地がふえてきている。こうした販売には元気な高齢者や婦人が多く参加しており、すこぶる活気にあふれているのも特徴である。
本書は、こうした直売向けの野菜生産者をおもな対象に、栽培技術とともに栄養価や機能性なども含めて、初心者にもわかりやすく解説したものである。したがって作型は、多品目少量生産で活用できるように、露地栽培やトンネル栽培についても詳しく記述した。また、栽培法ではポイントとなる技術を図解するとともに、他の野菜との組み合わせや失敗しないための注意点、農薬をできるだけ使わない工夫や、おいしくつくるポイントなどについても意を注いだ。
本書の執筆は、現場の第一線で指導に当たっておられる農業専門技術員や農業改良普及員、農業試験研究者などにお願いした。基本から最新の技術・知識までわかりやすく、しかもベテラン生産者にとっても十分活用できる濃い内容に仕上げていただいており、執筆者各位に深謝するものである。また、本書ができたのは企画・編集された農山漁村文化協会編集部のおかげであり、記してお礼を申し上げる。
本シリーズは、「果菜I(ナス科・マメ類)」、「果菜II(ウリ科・イチゴ・オクラ)」、「葉菜」、「根茎菜」、「軟化・芽物」の五巻からなり、本「果菜I」はナス科野菜、マメ類合わせて一二種類三〇作型を取り上げている。他の姉妹編とあわせてご活用いただき、安全でおいしい野菜つくりと、活気あふれる直売所経営に、そして野菜産地活性化の一助としていただければ幸いである。
二〇〇一年三月
川城 英夫