口絵

甘蔗培養并ニ製造ノ法<かんしゃばいようならびにせいぞうのほう>

平賀源内の主著『物類品』に収められている。宝暦(1751〜63)の当時,砂糖について国内の知識は不十分で,本書も中国・明の『天工開物』などからの引用と翻案からなる。しかし,類書のなかった当時にあっては,さとうきびの栽培,砂糖の製法について記された貴重な技術書であった。

羽陽秋北水土録(羽後)<うようしゅうほくすいどろく>

著者の和・漢・天竺の知識に通じた学識豊かな自然観,寺田経営によって蓄積した知識,地域の荒廃田復興にも携わった経験をもとに,羽後の地の総合的な国土開発を論ずる。内容は山,海,水源,農業,水田,時候,政事,祭祀,礼儀,雑例と多岐にわたる。

甘藷記<かんしょき>

本書は,青木昆陽『薩摩芋功能書并ニ作り様の伝』を主内容とする鈴木俊民編著『甘藷之記』と,小比賀時胤編著『蕃藷解』からなる。前者では,中国の書籍からの引用・翻案による中国流さつまいも栽培法が,後者では,わが国の先進地・長崎地方の栽培法が説かれている。

再種方<さいしゅほう>

「再種方」とは稲の二期作栽培の方法。大蔵永常が,土佐国で盛んな二期作の他国への普及をはかったもので,その有利性と栽培の実際を述べる。「付録」では,稲花の顕微鏡観察図を載せ,当時の常識であった植物雌雄説を蘭学の知見から批判している。

二物考<にぶつこう>

蘭学者・高野長英が,大飢饉に苦しむ人々を救おうとして著わした。二物,つまり気候不順でもよく成熟する早熟そばと,暴風雨や長雨にも強く栽培も簡単なじゃがいもについて記す。長英はその知識を,最新の西洋近代科学の成果を盛った蘭書から得ている。

農家須知(土佐)<のうかすち>

土佐国の医師が,「医食同源」の原理,陰陽五行説の方法論による作物の観察,実際の栽培結果をもとに本書を著わした。農作は「客(宴会)をするがごとし」として,座敷の掃除=地ごしらえ,酒・肴=肥料,食事時の案内=田植え時,招く客=苗,とたとえて,実践的に説く。